企画

□要するに君が好き
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※お茶様リクエスト
※お花見吾笹






肌寒い季節も去り、桜が満開となった休日。花見の名所と言われるとある公園は、花見客によって大きな賑わいを見せていた。所狭しと並べられたレジャーシートの上で、飲んだり騒いだり。そんな浮かれた空気の中では、酒に酔った者達による暴力沙汰も度々ある。
そんなわけで、笹塚は楽しそうな花見客を横目に、公園をウロウロと巡回していたのであった。

今頃上司や新入の部下達は桜の下でドンチャン騒ぎなのだろう。新入歓迎会も含めているから、部下は飲まされて大変なのだろうな、と他人事のように思った。
何も騒ぎが見えないのを確認して、笹塚は1人公園の隅にあったベンチに腰掛けた。背後から声を掛けられたのはその瞬間であった。

「おい、休日だってのに、スーツで何してんだよ」

聞き慣れたその声に、笹塚は酷く緩い動作で振り向いた。視線の先に立つのは、一歩間違えれば職務質問をされてもおかしくない程悪い目付きに、耳には勿論、口許にも光るピアス、短く揃えられた金髪。派手な色のシャツは、淡い桜並木からはかけ離れていた。
笹塚は首を元に戻し、一言。

「巡回」
「フン、おまわりに休日もクソもねェってか。ご苦労なこった」

その男――吾代は舌打ちでもしそうな勢いでそう答えると、笹塚の目を覆い隠すように何かをちらつかせた。近すぎてピントが合わなかったそれは、やがてゆっくり離れていく。どうやらそれはチラシのようで、そこに書かれた派手なピンク色の文字を、笹塚はぼんやりと読み上げた。

「……お花見ビアガーデン?」
「おうよ。花より団子、団子より酒の俺達にピッタリだろーが。ちょっと付き合えよ」

「勤務中なんだけど」という呟きは、吾代の見せた存外無邪気な笑顔に飲み込まれた。笹塚は吾代に手を引かれるまま、その背についていく。

会場に着くと、いくつか並べられた高い丸テーブルに椅子が4つ並んだ簡素な席が設置され、屋台のように列になったテーブルには、氷水の中に泳ぐ缶ビールが置かれている。それを見た吾代は不満そうに、

「やっぱ無料クオリティーだな。安いビールしかねェ」
「…客も疎らだな」

やはり桜の下で騒いでいる客の方が多いのだろう、席は殆ど人が居なかった。吾代はビールを2本手に取ると、近くにあった椅子を引き、ドカリと長い脚を投げ出して座った。

「飲めよ」
「……どうも」

笹塚は受け取ったは良いが、一応は勤務中であることを思い出し、すぐにプルを引いた吾代に反して、缶を持ったまま固まってしまった。吾代は訝しげに眉を寄せて、

「温くなんぞ」
「一応勤務中なんだけど」
「そんなもんで酔っ払うわけねーだろ。おら、貸せ」

笹塚の手からビールを奪い、吾代はプルを引く。プシュッ、と炭酸が抜ける音がした。

「なかなか良いだろ?桜を見ながらビールなんてのも」

吾代の言葉に、笹塚は顔を上げる。確かに、この席から桜を見ると、ちょうど公園の並木を一望できた。それだけでなく、周りにも数本桜があるため、花びらがヒラヒラとテーブルに着地する。笹塚は目の前でビールを喉に流し込んでいる吾代――恋人を見やり、

「悪くないな」
「あ?」
「お前と桜見るのも、悪くない」

放心状態の吾代を放り、笹塚はビールを一口飲み込む。安いビールだが、何だか満たされたような感覚になった。
笹塚の言葉を理解したのか、みるみる顔が赤くなっていく吾代。

「てめっ、いきなりデレてんじゃねーよ!」
「デレ…?別に、ほんとのことだけど」

不思議そうに見返してくる笹塚から発せられたのは、二度目の殺し文句であった。

「お、お前な!酔っ払って俺以外にそういうこと言うんじゃねーぞ!」
「酔ってねーよ」

狼狽えたままの吾代に対し、笹塚は至極冷静に答える。
二口目を口に含みながら、笹塚はもう一度桜並木を眺めたのだった。





要するに君が好き
(絶対口には出さないけど)






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お茶様よりリクエスト頂きました、お花見吾笹です(*^.^*)
オサレお花見、カフェでビール、イチャ甘…なにその素敵なシチュエーション!と狂喜乱舞したのにも関わらず、活かしきれないのが桃★太朗クオリティーでございます(-.-;)汗
お茶様へ!
いつもコメントや感想ありがとうございます!すごく励みになってます。マイナージャンルでもやっていけてるのはお茶様のおかげです(笑)
キリバンも踏まれたとの事でしたので、キリリクも併せて受け付けております。もしよろしければ何かリクエスト下さいませ(あっ、強制ではないです;)
今後ともよろしくお願いします(>_<)







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