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□大過去
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それはまだ天化も蝉玉も地上にいた頃のお話−


空を見上げると満点の星空。頭上には星屑が広がっている。
ここは周軍宿営地。今は夜で、非番の兵士達が大声で騒いでいる。普通なら粛々と食べなければならないのだろうが、軍師たる太公望は笑って許した。ただでさ
え食料は大切で出来るだけ節約しなければいけないので兵士の不満が溜まりやすい。そこでたまには大声で騒いで軍師も兵士も道士でさえも、飲み明かす事にし
たのだ。兵士達は専ら話に花を咲かせているし、道士はもともと肉は食べれない。実際食料の消費は普段よりも抑えられるという皮肉な結果をももたらしたが。

その喧騒から離れて一人、蝉玉は小高い丘の上でぼんやりと空を眺めていた。風も冷たくて、酔い冷ましには丁度良い。
「よ。なーにやってるさ?」
突然の後ろからの声。思わずキャッと声を上げてしまってから、ふぅ、と一旦息を吐いて落ち着いて。
「…ちょっと天化!びっくりするじゃない!!脅かさないでよ!!!」
片方の頬を膨らませて抗議してみるが、彼ー声を掛けた主は何事も無かったかのように蝉玉の隣に腰掛けた。
「悪い悪い」
にっと笑って隣をぽんぽんと叩く。
「‥‥はいはい」
半ば諦めたかのように、蝉玉は隣に座った。
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