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□大過去
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「飲み過ぎた?」
「うん。ちょっと…ね」
蝉玉は顔にかかった髪を手で払う。
「確かに酔い冷ましにはなるだろうけど、体を冷やしちゃいけないさ」
はい、と手渡されたのは大きめの上着。
「‥‥ありがと」
おとなしく受け取って羽織る。彼女には大きすぎたのだろう、十分体がスッポリ入る。
「綺麗…」
「‥だな。俺っちもそう思ったとこさ〜」
二人して空を見上げる。
「‥‥あたしね、最近思うことがあるワケ」
「?…何さ?」
「あたしも天化も道士でよかったって」
「なして?」
「もともとはさ、あたしパパから仙人界に行くのは大反対されてたの。でもあたしは武人になりたかったし、どうせなら聞太師みたいに強くなってパパの役に立ちたかったんだよね」
聞太師‥聞仲の名前が出て、一瞬だけ天化の顔が強張った。かつてはその背中を追い掛けた日もあった。今は敵になってしまっているが、親友の息子として可愛
がってもらった記憶もある。そんな天化の様子に気付いているのかいないのか、蝉玉は続けた。
「修業して修業して…宝貝も貰えてやっと役に立てるって嬉しかった。そしたら封神計画が始まった」
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