青い薔薇〈第一章〉

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元老院の監視下にいる僕はあの日
皐月を初めて見たんだ・・・



――――――
――――
――



「李土様、どちらへ?」

「―――庭に行くだけだ」


純血種が本気を出せばこんな監視下から抜け出すことは容易い
それでも僕が動かないのは、今はまだその時期じゃないから
なにも急ぐ必要はない、
血に飢える僕達、吸血鬼の時間は無限なのだから・・・


「ふぅ、」


ため息と共に見つめた中庭で
僕は寝転ぶ子どもを見つけた
(こんな場所に・・・子ども?)
不思議に思いながら近付くとそこには仰向けに寝転んで目を瞑る少女
僕の愛する人の面影を感じさせる彼女はきっと、


「樹里、の・・・娘・・・か?」


(確か皐月、だったか?)
無防備に眠る彼女を見て自然と笑みがこぼれた
いつぶりだろう・・・
僕がこんなにも優しい気持ちになれたのは?
思わずそっと髪の毛に触れていた
この娘の母、樹里が僕の前で無防備になることはもう二度とない―――

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