青い薔薇〈第一章〉

□Last
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“お手洗いに行ってきます”
なんてベタな嘘をついて月の寮を飛び出した私
今―――李土伯父様の目の前にいる


「まさか皐月から来てくれるなんてね・・・嬉しいよ、」


この人が纏う空気に―――
身体は小さく震えていた
でもみんなの住む世界が平和になるなら・・・私一人の犠牲なんて


「皐月、ずっと待っていたよ」


(えっ?)
一瞬のうちに私の背後へと回った李土伯父様は


「お願いだから僕のことを恐がらないで・・・」


そっと私を抱き締めた


「李土・・・伯父様?」


この感覚―――
なんとも言えないものが胸の中でもやもやと沸き上がる
身体が覚えている記憶?
でも李土伯父様との思い出なんて私には・・・
戸惑う私に


「皐月は覚えてないけれど、昔は“お友達”だったよ」


伯父様は優しく呟いた
(伯父様と私が・・・お友達?)
それが事実だと言うのならとても不思議な関係だ
私達から両親を奪ったのはこの目の前の李土伯父様で―――
私は優姫のヴァンパイア因子を封印するために人間になって・・・
でも原因の伯父様とはお友達?
よく―――わからない
それでも今、この人からは恐怖なんてものは感じられなくて・・・


「私が・・・伯父様についていけば手を引いてくださいますか?」


黒主学園には・・・
零や枢や優姫や―――
私の大切な人達がたくさんいる
みんなにもう危害は加えないでくれますか?

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