青い薔薇〈第二章〉

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「ちょ、ちょっと・・・零!!」

「皐月、離してくれ―――」


行かないで!!
そんな言葉を言う資格なんて私にはなくて・・・
“離してくれ”
そう言われれば零の腕を掴むこの手を離すしかない・・・
扉の向こうから聞こえるのは理事長さんが零を止める声
それでも零は枢達の後を追った
(やだ、零・・・)
行かないで!!!
手を離した私のそばに零は二度と戻ってこない気がして・・・
私は座り込んでしまった
瞳から零れ落ちる涙を零に止めてほしいと思うことはもう許されない


「ぜ、ろ・・・」


私は無意識に彼の名前を―――呼んでいた
浮かぶのは優しい笑顔・・・
そんな私を優しくふわっと包み込んでくれたのは


「壱・・・縷・・・?」


彼に瓜二つの男の子
もう私は限界で―――
壱縷の腕の中で泣き声をあげた
まるで小さな子どものように・・・
今さら気付いても遅い
それでも私は零のことが大好きで―――そばにいたいと思う


「い、ち・・・る―――私、零の・・・ことが、好き・・・」

「うん。それを言う相手は俺じゃないよね?」


壱縷は泣きじゃくる私の頭を優しく撫でて、微笑んでいた

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