保健室のお姉さん
□Last
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「け、景吾!??」
私は強く腕を引かれたまま中庭に連れてこられた。
「どうしたの?急に・・・」
ようやく止まってくれたかと思うと
今度はきつく抱きしめられた。
「景・・吾・・・?」
どうして?
なんで??
今まで何も言わなかった景吾がようやく口を開いた。
「なぁ、***の好きな奴・・・」
景吾??
何を言おうとしてるの?
「・・・不二なのか?」
どうして―――本人には伝わらないのに・・・
景吾にはわかっちゃうの?
目の前には見たこともないような悲しい色を瞳に浮かべる男の子
私は何も言えなくなった・・・
ずるいってわかってる
でも何も言わずに俯くことしかできなかった。
無言を貫いているともう一度抱きしめられた。
「俺じゃ・・・ダメか?」
その声はとても弱々しくていつもの傲慢さは微塵も感じられない
「私もう失恋してるの。でも、まだ諦められなくって・・・しつこい女だよね」
自嘲気味に話すことしかできなかった。
「相手にもされてないのに・・・」
景吾は私を抱きしめたまま聞いてくれる。
「・・・初めて人に話したの。今までずっと言えなくて・・・」
涙が溢れてその先の言葉は紡げなかった。
怖かったの―――
ずっと怖かった・・・
周助君への気持ちを口に出してしまったら
何かが変わってしまうんじゃないかって―――
「***は・・・不器用だな」
私が・・・不器用?
驚いて腕の中で景吾を見上げた。
彼は穏やかな微笑みを私に見せてくれて・・・
私のおでこにキスを落とした。
「不二に泣かされたら俺様がもらってやるよ」
「・・・私、一応?教師なんです」
生徒との恋愛だなんて・・・
「ア〜ン?じゃぁ俺様専属のメイドとして働くか?」
景吾の提案に思わず私は噴き出してしまった。
「ちょっと・・・でも、ありがと」
こんな言葉しか言えない私だけどちゃんと伝わっているだろうか?
あなたがいてくれて―――本当によかった