貴方が望むその先に
□1
1ページ/6ページ
この時の私は―――
始まったばかりの生活が楽しくて
毎日がそれこそ薔薇色で・・・
ずっと続く物語なんだと信じて疑わなかった
「靴はいたまま玄関でボーッとしてどうしたの?」
「えっ、あ・・・」
「お風呂にする?ご飯にする?それとも―――わ・た・し?」
「あぁ、」
「・・・ねぇ、大丈夫?」
「ちょっとこのところ仕事が忙しくてな。そんな顔するなよ。風呂に入って疲れとってくるな」
いつもなら優しい顔して私の冗談にも付き合ってくれるのに・・・
ホントに仕事で疲れてるだけ?
私の前を通り過ぎた彼の背に何度問いかけても心の声は届くはずもなく
脱衣室の扉が パタン という音を部屋中に響かせた
「この後のご飯・・・食べる、ときに聞こう―――かな?」
不安になってわざと呟けば声は少しだけ震えていて
思わず深呼吸を1つ
いつもと少し様子の違う彼を思い出しながら冷えたスープを温めるためコンロのスイッチを入れた
(仕事で・・・疲れてるだけだよ、ね?)