貴方が望むその先に
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「家庭教師かぁ・・・」
優姫ちゃんが私の机に置いていった教科書を パラパラ と捲りながら昔の記憶を思い起こしていた
(こんな数式・・・覚えてない)
教科書に並ぶ数式に若干の不安を抱き始めた私は適当に開いたページの問題文に目を通してメモ帳を取り出した―――
『奏太〜〜、珍しいね。居残りしてまで勉強なんて・・・』
『俺もたまには学生らしいことしようと思ってんだよ』
『赤点で補習のくせに・・・』
『あっ、性格悪いぞー』
『そんなこと言うなら教えてあげなーい。せっかく家庭教師してあげようと思って来たのに』
『おぉ!性格悪くない!!葉月は優しい優しい!!』
『・・・仕方ないなぁー』
高校生の頃はまだ奏太のことを1人の男性として見てなくて
バカ騒ぎできる悪友の1人で・・・
まさかそんな人が恋人になるだなんてちっとも考えてなかった
成人式で再会したあの日、
私は恋に落ちたんだよ―――
奏太も同じ気持ちだと知った時は人生でこれ以上の幸せはない・・・
本当にそう思ってた
「葉月ちゃん、そろそろ時間だけど区切りつく?」
「あ、ハイっ!!」
千帆さんの声で現実に戻った私は急いで帰宅の準備を始めた
(夜間部と入れ替え時間だ・・・)