貴方が望むその先に

□13
2ページ/6ページ

誰もが優雅に階段を降りる枢さんに視線を向ける中、頭の中を整理しきれない私は枢さんの足が目に入って顔を上げた
不安になって横を見ればそこには夜間部の人達と私の間に立つように拓麻くんがいて・・・
(拓麻くん、優しい)
枢さんの視線に耐えきれなくて思わず袖を ぎゅっ と握った


「・・・一条との信頼関係はできあがってるみたいだね?」

「えっ・・・?」


無意識に―――
枢さんに言われて彼の袖口から手を離そうとすれば拓麻くんは私の指に彼の指を絡めた
(これって恋人つなぎ・・・)
奏太を消してしまった拓麻くん
今の私はそんな彼を憎むことができなくて
奏太が知ったら怒るかな?
それよりも―――
以前はあんなにも鮮明に思い出せた奏太の顔、声、温もり
私の記憶から少しずつ、少しずつ薄れて初めている
彼の死を受け入れて乗り越えていくためには仕方のないことなのかもしれないけれど今はそんな自分が許せない・・・


「ねぇ枢さん・・・私を奏太と同じ吸血鬼にしてください・・・」

「葉月さん!??」

「私、奏太と同じ生き物になりたい・・・例えその末路が彼と同じでも」


いつまでも忘れることないように
私が奏太を―――・・・

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ