貴方が望むその先に
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「葉月さん、ありがとう!約束だからねー」
「えっ・・・約束って・・・」
走るように去っていく優姫ちゃん
家庭教師のかいあってか英語の小テストでいつもより優秀な成績を修めたらしくわざわざ報告に来てくれた彼女
でも去り際、言い残した爆弾に私の心が揺さぶられる
「枢さん・・・に?」
「僕に?」
「ちゃんと向き合うようにって」
「そうだね」
(ん?)
この事務室に男性っていないよね
恐る恐る身体を振り向かせると
「葉月・・・いつまで避けるつもりかな?僕のこと」
「えっと・・・」
「奏太さんのことを思い出にしないために僕を避けるの?」
「ち、違う!」
わかってる、
奏太はこの世界にいないこと
そうじゃなくて―――
「私、枢さんの近くにいればいるほど・・・貴方のこと」
「葉月」
その声色は今まで聞いた中で一番優しく甘いもので
私の脳を麻痺させるには十分で
強く私を抱き締める彼を突っぱねることはしなかった・・・
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(枢さん・・・あの、そろそろ)
(いいよ、今日は休講だから)
(休講?そんな日もあるんだ)
(まぁね、クスッ)
2013.8.20