貴方が望むその先に

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夏至―――太陽高度が最も高く、一年で昼間の最も長い日


「あ、暑い・・・」


朝からなんとエアコンの故障
千帆さんは早々に仕事を切り上げてエアコンのあるどこかの部屋にお邪魔しているらしい
(ネットワーク広すぎ・・・)
私はうちわで パタパタ と気休め程度の暑さ対策
拭いても拭いても吹き出す汗
業者さんが来るまでここを離れるわけにはいかなくて・・・
あと1時間―――
でも、


「もー限界!!」


事務室不在のお知らせを表に掛けて簡易シャワー室に足を踏み入れた
タオルと着替えを確認してボタンを外しながら暑さでちゃんと回らない頭で考えていたことは―――
思わず口に出ていたらしい


「海・・・行きたいなぁ」


青い澄みきった海と空
さらさらと足を捉える白い砂浜
夏の風物詩を想像して瞳を閉じていると


「ふ〜ん―――葉月は僕を干からびさせたいの?」


後ろから聞こえた声に驚いて勢いよく振り返った
そこには明らかに機嫌の悪そうな男の人が1人


「枢・・・そういうわけじゃ・・・」


だいたい枢が聞いてるなんて思ってもいなかったし
1歩ずつ後ろに下がる私とは対照に1歩ずつ前に進む枢
私の背中が壁に隙間なくくっつけば右腕を スッ と持ち上げて
その手首と彼の唇を重ねた
途端に上昇する体温


「か、枢!?」

「ふふふ・・・葉月、顔真っ赤。何を期待したのかな?」

「っ!!!」


業者さんが来るまでこの暑い部屋に2人きり・・・
生きた心地がしなかった



********

(今から僕の部屋に行くよ)

(えっ、ちょっと放して!?)

(2階から入るよ)

(え?2階・・・って、か・・・なめ、これ)

(1階を少し改装してみたよ。塩分調整も完璧だから)

(・・・入口―――は?)

(あぁ、閉じておいたから。波の表現が少し難しかったかな?)


2013.8.25

 

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