短編
□弐
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高杉がここに来てから一週間
彼はずっと暴れていた。机を蹴り飛ばしソファーを串刺しにして襖をボロボロに穴を開けて壁には無数の穴があいている
「晋ちゃんもうやめよう」
「俺にさわんじゃねぇ!!!!」
そしてこのやり取りが一週間続いている。銀時は一週間まともに寝ていない。原因は高杉が脱走しようとするから
彼は物を壊して、相手の隙を見ては脱走をしようとしていた。しかし、元白夜叉として恐れられていた銀時はその隙を見せなかった
弱腰になりながらも高杉を宥めては投げて来る物に対しては正確に避けている。決して高杉を窓やドア付近には近づけはしなかった
それが反対に高杉にとって面白くないのか反発を繰り返す。
だが、お互い7日7晩、ご飯もまともに食べていなければ寝てもいない
そろそろ体力の限界が来るだろう
どっちが先に倒れるか、と銀時は霞む目を擦りながら高杉を見た
その時だった。
さっきまで暴れていた高杉が急に静かになった。そのとたん糸がきれたかのように高杉は床に倒れたのだ
そりゃ、飲まず食わずでまともな睡眠もとらずに暴れていたら倒れるだろうと銀時はため息をつけばやっとおとなしくなった高杉を抱き上げた
「軽っ!?」
気を失った男を抱き上げたとはいえ普通なら重いはずだが異様にも軽すぎたのだ
銀時はこんなにも軽い高杉を心配するも部屋の布団へと寝かせれば自分もボロボロになった、かつてはソファーと呼ばれていたものに横になった
「銀ちゃーん生きてるあるカ?」
ガラガラとがたついた戸を開けて入ってきたのは今、妙のところで新八と住んでいる神楽だった
「神楽か?」
「生きてたあるカ!てっきり死んだかと思ってたアル」
「勝手に殺さないでくんない?それより何だ?此処は危ないから来るなって言っただろ?」
「そんなのわかってるアルヨ!銀ちゃんに差し入れネ姐御がまともに飯も食べてないからっておにぎり作ってきたアル」
神楽は持っていた風呂敷からプラスチックの容器を取り出せば中には様々な形のおにぎりがぎっしりと入っていた
「サンキュー…もしかしてゴリラ女のはねぇだろな?」
「大丈夫アル!新八が説得して私と新八の二人で作ったネ」
笑みを浮かべながら神楽はそう言っておにぎりを一つとれば銀時に渡した
「それで銀ちゃん…あいつはどこ行ったアルカ?」
「しんちゃ…高杉か?高杉なら今やっと寝たとこだ」
銀時が神楽が渡したおにぎりを一口食べれば寝室を指さした
「…ねぇなんで銀ちゃんはあんな奴の面倒見るアルカ?あいつは敵アル!!」
「神楽…」
「忘れたアルカ?あいつのせいで銀ちゃん死にかけたアル!!なのになんで銀ちゃんは身体を張ってまで面倒見るアル!あんな奴ほっとけばいいネ」
「神楽っ!!」
訴えるかのように神楽は今までたまっていた不満を銀時にぶつけた。そんな神楽を見てか銀時は神楽を黙らせるかのように呼べば神楽の頭を撫でた
「…神楽お前がもし目が覚めた時知らない場所にいて周りには敵か味方かもわからない奴らだけだったらどうする?」
「…それは…暴れるアル…」
「だろ?高杉は今その状況と一緒だ…敵も味方かもわからない奴らにこんなところへと連れて来られて俺と一緒なんだそりゃあ暴れるだろ」
「…でもっ…」
「わかってる…俺の身体がもたないって心配してんだろ?大丈夫だからよ…ほらっさっさと帰りな!少女が夜道を一人で帰る方が銀さん心配だ」
「……わかったネ…でも無茶したらダメアルよ!何か困ったら私を呼ぶヨロシ」
銀時の言葉に納得して渋々と神楽は頷けば立ち上がり玄関へと走っていく
「あぁ」
「ならまた来るアルおやすみネ銀ちゃん」
神楽は笑顔でそう言えば戸をひいてでていった。急に静かになった万事屋目の前にある神楽達が作ってくれたおにぎりをもう一つとれば銀時は一口かじった
「無理するな…か…そりゃ無理かもしれねぇな」
銀時は高杉が眠る寝室を見てはぽつりと呟いた
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