短編
□玖
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「神楽ちゃん遅いですね…いつもならとっくに帰っている時間なのに…」
「…あーそうだな…どうせまたお前の姉ちゃんとこ行ってんだろ」
「姉上のところですか?まさか…今日から三日間姉上は仕事の友達と温泉旅行に行くって言ってましたから」
「んじゃぁそろそろ帰ってくんじゃねぇの?」
銀時は薄暗くなった窓の外を見つめながらそう言った。時刻は既に7時を過ぎているもう外は日が落ちてきて外灯が道を照らしていた
ガラガラガラ
「神楽ちゃんやっと帰ってきたか」
玄関の開く音に新八は気づき急いで玄関に向かった時だった
「沖田さん!?大丈夫ですか」
新八の目の前にいるのは血だらけで弱った沖田の姿。
新八の声に高杉と銀時も慌てて玄関へと駆け付けた
「…チャイナが…」
「沖田さん…神楽ちゃんがどうしたんですか?」
「チャイナが…連れ…去られたんで…さぁ」
沖田は弱々しく新八にそういえば最後の力を振り絞りあの時に渡された手紙を新八に手渡せばそのまま沖田は気を失ってしまった
「神楽ちゃんが!?沖田さんいったい誰に…」
「新八…今はそいつを手当てしてやれ」
「…はい…でも、神楽ちゃんを連れさらった人を見つけなきゃ」
「それはだいたい検討はついてるよ…この手紙に書いてある…春雨ってな」
銀時は手紙を新八に見せた。新八はその手紙の宛先に目を丸くした
「春雨って…あの春雨ですか!?」
「あぁ…それに明日迄に廃墟になったビルの近くの路地裏にこいとよ」
「目的は何なんでしょうか?…金目当てではないとしたら…もしかして銀さんの命とか」
「そうじゃねぇよとは言いきれないな…でもまずはこいつを何とかしようぜ」
銀時は気を失った沖田を抱えれば布団へと連れて新八に手当てを任せた
それからしばらくして手当てが終わり一段落つけば三人は居間へと集まった
「明日の役割を決めよう」
「役割ですか?」
「あぁ…むやみに俺ら三人が突っ込んでもどうせあっちの方が人数は多いに決まってるだから新八お前は真選組を呼んでこい」
「真選組ですね…わかりました…それじゃぁ高杉さんは」
「こいつは俺と一緒に行動してもらうわかったか?晋ちゃん?」
「あぁ…」
高杉は銀時の言葉に多少不安になりながらも頷くのだった
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次の日、銀時達は言われたとおりにあの場所へと向かった
そしてそこにいたのは数十人の雑魚天人の姿と捕まった神楽がいた
「銀ちゃん!!!」
「神楽!」
「やっときたか…銀時よ」
一人のマントを被った男が顔は見えないがゆっくりと前へと出てきた
「用件は何だ…それに俺はお前なんて知らないんですけど」
「知らないとは悲しいものだな…まぁいい、いずれにしろ貴様には関係のない事だ…それじゃぁ用件を言おう…勿論欲しいのはお前の大切なものだ」
「やっぱりか…そうかよ…そんなに俺の命が欲しいか」
「フフッ…それじゃぁ大事なものをかけての勝負をしよう…お前が勝てばこの娘は返してやる!だがお前が負ければお前の大事なものを貰おう」
「わかった!」
銀時は木刀を腰から抜けばその男に向けた。その男は首を横に振り後ろに避ければ次出てきたのは神楽をさらったあのリーダー天人だった
「てめぇが相手か?」
「はい」
不穏な空気が流れピリピリとした殺気が二人を取り巻くのが見える
そしてしばらくその時間が流れただろうか。それを掻き消すかのように天人が斬りかかってきた。それを銀時がぎりぎりで避けては銀時も反撃をする
何十分が過ぎただろうか…二人は激戦で疲れ果てていた。そしてこれが最後の一太刀とお互いがお互いを斬った時倒れたのはあの天人だった
「…勝ったぜ…さぁ神楽を返してもらおうか」
「うむ…約束は約束だこの娘を解放してやれ」
マントの被った男は笑みを浮かべれば神楽を雑魚天人に解放させた
「銀ちゃん!!」
「神楽怪我はないか」
銀時に抱き着く神楽に銀時が笑みを零し神楽の頭を撫でた
銀時は一度神楽から顔をあげて春雨の方を見れば春雨は撤退をしていっている
その時、銀時の頭に高杉の姿が過ぎった。
振り返り辺りを見るが一緒に来ていた高杉の姿がない
「高杉を探しておるのだろう?残念ながら高杉は私どもが手に入れた貴様の大切なものはもらった」
銀時は顔を上げればあのマントの男は廃墟のビルの上で気を失った高杉を担いでいた
「てめぇ!?話が違うだろ!!」
「私は別に嘘はついてない…私が言ったのはお前が勝ったら娘は返すと言ったがお前の大事なものを奪わないとは言っていない」
男は笑みを浮かべれば高杉を担いだままそれだけを言い残し去っていく
銀時はその光景に苦虫をかみつぶしたような顔をするのだった
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