短編集X/

□おたまじゃくしのクリスマス
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「・・・どうすんのよ、コレ。」
「やるしかねぇだろ。」
「まさかこんな格好するなんて思わなかったわ。」

「「「・・・・・・。」」」



今日はクリスマス。
それは覚えていたけれど、特に用もなく過ごすはずだった。

そんな中で火影様に呼ばれて向かってみると、途中で会ったアスマと紅。

オレ達は火影様からの言葉を聞き終えて・・正直困ってる。



「サンタって・・・ねぇ。」
「お前似合わなそうだな。」
「ああ、ほんとね。ただの不審者になりそうだわ。」
「あのね・・・。っていうか本当にやるの?」

「仮にも火影からの命だと思ったらな。」
「やるしかないでしょ?」
「・・・・・。」




≪サンタになって来い。≫

≪≪≪・・・は?≫≫≫

≪お前たちの部下にプレゼントをやれという事だ。≫
≪・・・あの・・。≫
≪ほれ、衣装はワシが提供する。≫

≪こ・・これを着て・・ですか?≫
≪そうじゃ。≫

≪≪≪・・・・・・・。≫≫≫



まさかのサンタクロースの衣装を渡されて、唖然としたオレ達。
ちょっとこれはさすがに・・・恥ずかしい。



「紅のはスカートか?」
「そうみたいね。」
「・・・・アスマ、何想像してんの。」
「な、何言ってんだ!別に想像なんて・・!」
「そ、そうよカカシ何言ってんの!」

「・・はいはい。じゃあ後は2人でごゆっくり。」

「あ、おい!」
「カカシ!!」



冷静に考えてみれば、あの2人だって今日は一緒に過ごしていたんだろう。
・・ご愁傷様。

それにしてもこの衣装・・・・




≪・・・火影様。コレって・・。≫
≪どうしたカカシ?≫

≪・・・いえ。何でもありません。≫



・・・・・あの時と一緒とか?
いや、違うか。

あれは・・・多分自前だったもんな。


















≪・・・先生。何してるんですか?≫
≪やぁ、カカシ。サンタクロースだよ。≫
≪・・・・。≫


今からかなり昔のクリスマス、寝ていると誰かの気配を感じた。
目を開けてみると、赤い服に付け鬚まで付けた・・・黄色い髪の人。


≪いい子にはプレゼントをあげる事になってるからね。≫
≪・・・あの・・せん・・・≫
≪サンタクロースだよ。≫

≪・・・サンタクロースさん。≫
≪ん?≫
≪どうやって・・入ったんですか?≫
≪それは煙突から。≫
≪・・・・・。≫(煙突ないんだけど・・・。)

≪さて、ここに置いておくからね。

≪・・・・・。≫

≪じゃあカカシ。メリークリスマス!≫
≪あ・・・せんせ・・・じゃなくて・・・。≫
≪・・・・。≫
≪・・・サンタさん。≫
≪ん?≫

≪・・・ありがとう・・・。≫
≪・・ん!メリークリスマス!≫



机の上に置かれたプレゼントを開けると、本が入ってた。
オレが前に、欲しがっていた本。






・・・嬉しかった。













―ドサ


「さて・・・どうしようかね・・・。」


昔を思い出しながら、とりあえず家に戻った。
アイツ等にプレゼントを渡すったって・・こんな格好でねぇ・・・。
確実にオレってバレるだろうし、寝た頃にこっそりと置きに行くか。

何もコレを着なくても・・・
コレは多分、気分の問題でしょ?


火影様に渡されたサンタの衣装を眺めてまた思い出す。
・・・あれは確か、父さんが死んで初めてのクリスマスだった。


先生は優しい人だった。
それから毎年、オレの家にはサンタがやって来た。






≪おい、聞いてくれよ。≫
≪何?≫
≪どうしたのオビト?≫

≪オレ昨日・・・見たかもしれない。≫
≪え?≫
≪何を?≫

≪・・・サンタクロース。≫

≪≪・・・・。≫≫


≪あ、信じてないだろ!本当なんだって!!
寝てたんだけどさ、窓から出ていく瞬間見たんだって!!≫
≪そう・・なんだ・・・。≫
≪・・・・。≫

≪オレだって信じてた訳じゃないけど、それでもあれは本物っぽかった・・・。≫
≪あはは・・良かったね。≫
≪リンの所には来たか!?≫
≪え!?あ・・うん。来てくれた・・・。≫
≪カカシは!?≫
≪・・・さぁね。≫
≪なんだよさぁねって!あ、おい!!≫




・・・あれは驚いた。
リンは確実に気付いてたけどね。まさか本物だってあんな真剣に言ってくるなんて・・・。

思いだして笑ってしまった。
それを思いだした所で初めて気付く。


ナルトが今まで、どうやってクリスマスを過ごしていたのか。


・・・火影様が一緒だった・・とか?いや、イルカ先生か?


どっちにしても・・・・・




「・・・・・・・。」





先生が生きていたら、きっと毎年サンタはナルトの所に来ただろう。
あの人の事だ。ナルトがハタチになるまでは確実じゃない?


それでもそれは、1度も訪れなかった。





≪メリークリスマス!≫

「・・・・・・・。」












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