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□甘え
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楽しげな話し声と小気味よい食器の音が溢れる食堂で俺は、目の前の皿を睨んでいた。正確には皿の上にあるにんじんを、だ。
フォークの先でつついたり転がしたりしてもにんじんは消えないけど、食べたくない。
「あれ、ルークにんじん嫌いなの?」
キッチンから戻ってきたジュードが隣に座った。
いつの間にか大体の人が食べ終わってた。
「うん、なんかちょっと苦いっつーか…」
「そうなんだ。でもせっかくクレア達が作ってくれたんだから食べてみたらどうかな?」
「けど…」
「大丈夫だよ、僕も食べたけどおいしかったし、ルークが思ってるほど苦くないよ」
「うー」
そういうもんかな?にんじんは苦いってイメージがあるんだけど。
にんじんをフォークに刺して口まで持っていってもやっぱためらっちまう。ちらりとジュードを見たらにっこり笑った。
食べるまでずっと見てそうだな。
こうなりゃ一気に行くしかっ!

ぱく

「どう?やっぱり苦かった?」
「…いや、イケるかも」
おいしいって言えないけど、ちょっと甘い、気がする。
これなら、と残ってたにんじん全部食べた。
「すごいよ、嫌いなもの全部食べれたね」
「…へへ」
褒められると照れるな。
「少し待っててね」
ジュードは俺の皿を持ってキッチンに行った。
俺が片付けたのに。
戻ってきたら今度は小さい皿を持ってた。
「はい、これあげるよ」
プリン?
キャラメルソースに生クリーム、その上にさくらんぼが乗ってる、よく見かける奴そのものだった。
「いいのか?」
誰かにあげる予定だったら断るけど…。
「うん、夕飯前に急に作りたくなったから作ったんだ」
みんなには内緒ね?と付け加えてスプーンをくれた。
ジュードは嘘は言わないしにんじん食ったご褒美みたいだから、喜んで食べることにした。
「うまっ」
「本当?よかった」
こんなことがあるなら、嫌いなもの時々は食べてもいいかもな。


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