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□父さんはがんばった
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アンジュに緊急の依頼が来ているから引き受けてくれないかと頼まれ、スタン、リオン、カイルは下町に来ていた。
どうやら小さいながらも祭りをするようで、劇を企画していたがヒロイン役の子が足をひねって出られなくなったらしい。
「あ〜、男しかいないなぁ」
スタンが申し訳なさそうに言うと、男性はものすごい勢いで頭を下げた。
「いえ! この際男でも構いません! 代役をやってください、お願いします!」
「そうは言っても…」
「この劇の内容は簡単に言うと背が高い女の子と背が低い男の子の恋物語なんです、うちの嫁が化粧で誤魔化してくれると思いますのでどうか、どうか…!!」
「わ、分かりました、分かりましたから離れてください!!」
「本当ですか!? ありがとうございます、今衣装と台本持ってきますね!」
男性はスタンの手を握ってからどこかへ走り去ってしまった。
「おい、そんな簡単に引き受けていいのか?」
「うーん、でもあの人必死だったしなんとかなるんじゃないか?」
困ったように笑いながらスタンは頬をかいた。
しばらくして男性が戻ってきた。
「こちらが衣装と台本です! できれば10分で代役を決めて向こうのテントに来てください、仲間が服を合わせてくれます! では私は舞台の準備がありますので!」
男性はまた慌ただしく去っていった。
「本当に忙しそうだな」
「劇は今夜のようだからな、当然だろう」
「ねぇ父さん、ヒロイン役誰がやるの?」
「そうだなぁ…」
とりあえず自分はやりたくないスタンだった。渡された衣装を広げてみる。
「でかっ! しかもこれミニスカじゃん!!」
思っていたよりも大きめの衣装だった。そういうえばヒロインは背が高い女の子なのだから服が大きいのは当たり前のことだろう。問題はミニスカだ。
「じゃあ父さん頑張ってね」
カイルが手を振った。
「なんで俺!?」
「サイズは父さんが近いからだよ、俺と叔父さんは客席で応援するよ」
「適任だな」
「リオンまでなんで納得してんの? 無理だよ、30過ぎた親父がこんなの着ても見苦しいだけだって!」
「大丈夫だよ」
カイルはスタンの肩に手を置いた。
「父さんは19歳の時から身長伸びてないし(リリス談)、細いし可愛いから問題ないよ! 胸膨らませたら女の子にしか見えないって」
「カイル、それフォローのつもりなのか?」
嬉しくもない励ましのスタンの心は折れそうになった。
リオンは呆れながらため息を吐き、腕を組んだ。
「諦めてさっさと衣装合わせに行ったらどうだ」
「なんだよ人事みたいに。どうせならリオンがいいじゃん、色白いし美人だし俺より似合うだろ」
「馬鹿を言うな! それではお前の生足が見れないだろうが!!」
「…え」
真顔で言ったリオンにさすがのスタンも若干引いた。
「さすがだよ叔父さん! いつもただの変態としか思ってなかったけど今回はGJ!!」(叔父さん自重して)
「スタンの生足のためなら僕はどんな犠牲も払ってみせる!」(早くしろ、時間がない)
「2人とも、本音が駄々漏れだよ…」
リオンとカイルに押し切られたスタンは泣きながらテントに入っていった。
夜の劇では半ばヤケクソに、しかしスカートを気にして恥らう姿が可愛いと評判を受け、大成功に終わったそうだ。


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