いままでの拍手

□願い
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探しもの、願い事


「彼等の旅路に幸多からんことを…」
雨上がりの雲の間に陽がさし、侑子はたった今旅立った異世界からの客人を見送った。
「行っちゃいましたね…」
隣ではモコナを抱えた四月一日が空を見上げる。
先程の客人と四月一日の未来を思うと複雑な心中だが、絶対大丈夫だと不思議な確信があった。
侑子は一度目を伏せ、手を二度と叩く。
「四月一日、まだ終わりじゃないわよ」
「へ?まだって…」
「次の客が来るわ」
瞬間、2人の目の前で空間がグニャリと歪んだ。大きな卵の形になったかと思えば、流れ落ちる水のように崩れた。
そこには朱金の青年と緑の少年が立っていた。
「なんかまた変なのきた!!」
四月一日の叫びに青年は驚き、少年は睨んできた。鋭い目つきに四月一日はあわあわと両手をばたつかせる。
侑子はその可笑しな動きに笑ってから、青年と少年に向き直る。
「私の店にようこそ」
「店?」
青年が首を傾げた。
「ここは願いが叶う店。対価さえ払えば、私ができることならなんでも叶う店」
侑子は2人を交互に見る。
「あなたたちの願い、叶えましょう」
少年は侑子を睨んだ。その瞳には殺気が込められている。
「願いを叶えるだって? 馬鹿馬鹿しい」
「そうかしら? とにかく中に案内するわ、ここだと話はできないし。四月一日、お茶出して」
「は、はい」
「モコナも行くー!!」
「喋ったぁあ!!」
いきなり飛び跳ねて喋ったモコナに驚きながら四月一日は店の中へ消えた。
青年は素直に、少し戸惑いながら店に入る侑子と四月一日について行く。が、店に上がる前に少年の方へ振り返る。声をかけようと口を動かすも、なんと言えばいいか分からないようだ。
少年は青年を一瞥して店に上がった。



「ルークとシンクね、いい名前じゃない」
四月一日が淹れたお茶を飲んで侑子は一息ついた。後ろに控える四月一日からすれば、さっきからガン飛ばしてくる少年をもっと警戒しろと言いたい。
侑子がコップを置いた。
「結論から言うならココはあなたたちが住んでいた世界とは違う世界」
「え…」
「魔力を持たないあなたたちがどうやって世界を説明できないけど、この店に入れたということは何か願いがあるということ」
侑子の目がスッと細くなる。

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