★過去作品★
□あんなに一緒だったのに
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「恭ちゃん、恭ちゃん!」
そう言って駆け寄ってくるのは、近所に住む沢田綱吉。
恭ちゃん、と呼ばれ振り向くのは、綱吉の一つ年上である幼馴染の雲雀恭弥だ。
「何、綱吉?」
「あのね、ツナね、昨日の夜に、こーんな大きなケーキ食べたの!!」
「おやつに食べたんだ、いいね」
「違うの、昨日はツナの誕生日だったんだよ!」
「えっ…!?」
綱吉と初めて出会ったのは、近くの地区に設置されていた公園だった。
一人で寂しそうに砂遊びをしていた綱吉を見て、思わず声を掛けたんだ。
琥珀色の瞳にそれと同じ色の柔らかそうな髪、ぷっくりとしたピンク色の唇に丸い輪郭、女の子そのものの容姿で、最初は雲雀も勘違いをしていた。
だが、どうも様子を見てみると男の子なんだと悟った雲雀は、それから綱吉と顔を合わせるようになった。
そして話していくうちに、引っ込み思案だった綱吉が、だんだん雲雀を受け入れてくれるようになって、雲雀自身も幼くも嬉しかった。
それから雲雀は綱吉の実の兄のように寄り添ってきた。
綱吉も同様に雲雀を兄のように慕っていた。
だが、雲雀が小学生になったのと同時にお互いが顔を合わせる時間帯がずれてしまい、雲雀も綱吉も会いたくとも会えなくなってしまった。
(すっかり忘れてた…)
こうして綱吉と会話したのはもう1週間ぶりだろう。
学校や習い事やらで忙しかった雲雀は、綱吉の言葉にはっ、となった。
今まで忘れたことはなかった綱吉の誕生日を、雲雀は忘れていた。
「ごめん、もうそんな季節だったんだね…気付けなくて、本当にごめん」
「うんん、平気だよ。恭ちゃん、学校大変だもんね、お母さんが言ってた。学校は忙しいって」
「綱吉…」
まだ5歳になったばかりの綱吉が、慣れないフォローをしていることに、雲雀は酷く胸が苦しくなった。
もしも本当の兄弟だったなら…
毎日一緒にいて、会話して、遊んであげて、それで誕生日なんて絶対忘れないのに…
雲雀はいつもそんなことを考えていた。
雲雀は申し訳ない表情を浮かべながら、綱吉の頭を撫でて言った。
「忘れててごめんね…お誕生日おめでとう、綱吉」
「うん!恭ちゃんありがとう!!」
本当は誕生日の当日に雲雀に会えなくて寂しかった綱吉は、一日遅れでも雲雀のたった一言で、昨日の寂しさなんて忘れてしまった。
それくらい、雲雀は特別で大切な存在だった。
「明日は学校、休みだから一緒に遊ぼうか?」
「うん!!ツナ、嬉しい!!」
満面の笑みを浮かべる綱吉に、雲雀も安心して綱吉の手を引いた。
綱吉もトテトテと必死に雲雀についていこうと歩いた。
そんな幼くて清かった関係は、いつしか消えていってしまった。
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