★過去作品★

□あんなに一緒だったのに
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「雲雀さん?」


瞳を閉じて、屋上で昼寝をしていた雲雀の上で、なんとなく聞き慣れた声がした。


それに雲雀はゆっくりと瞼を上げる。


「…綱吉?」


逆光で顔が認識しにくかった雲雀は、勘に任せて名前を呼んだ。


「はい、俺です」


そう言って仰向けで寝ている雲雀の隣に腰を下ろした綱吉。

その姿に、目を擦りながらも雲雀は綱吉に尋ねた。



「君、まだ授業中でしょう?」


「今は休み時間ですよ。教室から雲雀さんが屋上の窓から出てきたところが見えたので、来てみました」




そう言った後は満面の笑み。


雲雀は無性にも、嬉しくなった。



自分を見かけたからといって、綱吉とは反対の校舎にある屋上なのに…

わざわざ遠くからここまで来てくれたのかと思うと嬉しくて仕方なかった。



「この前は、途中ですみませんでした…」


「ん?」


「あの、入学式の後です。本当は、もう少し雲雀さんとお話したかったんですけど…だから今日は俺から会いにきました」


「…そう、」


嬉しくて、嬉しくて…


そんなこと表に出せない雲雀は、嬉しさを隠すように短い返事をした。


それでも綱吉の視線は雲雀に向けられたままで、雲雀はなんとなく視線を逸らした。



「…雲雀さん、声が低くなりましたね」

「男はみんな声変わりするからね…君は相変わらず、成長した様子はないけれど?」

「うわ、酷いですよ!これでも平均身長なんですから!!」

「今年の一年はほとんどが小さいからね。そのうち平均値も上がっていくよ」

「その分、俺の身長も伸びますから!!」


「…どうだろうね」



そんな他愛のないやり取りに、雲雀は久しぶりに自然と笑えた。

綱吉もその表情に一瞬目を丸くしたが、雲雀の倍に笑顔を見せた。





あぁ、こんな日々が永遠に続くといいのに…




そう願った途端だった。



「…雲雀さん、付き合ってる人とかいますか?」


「えっ?」



突然綱吉の口から発せられた言葉に、雲雀は驚いた。


「いるんですか、好きな人」


「いや、いないけど…それ以前に僕は群れたくないよ」

「え、じゃあ俺は?」

「何が?」

「俺は雲雀さんと一緒にいても大丈夫なんですか?」

「当たり前でしょう」

「…それって、深い意味はないですよね?」

「確認してどうするの?」

「い、いえ…」

「…別に深い意味はないよ。幼い頃から一緒にいたんだから、こうして綱吉と話すのも自然なことだと思うけど…君は違うの?」


「…いえ、その通りです」


「大体、なんでまた急にそんなこと言い出したのさ?」


雲雀は溜め息混じりに綱吉に尋ねた。






「実は俺、…好きな人ができたかもしれないんです」






無意識に尋ねた質問に、綱吉から意外な返事が返ってきた。


雲雀はその言葉に動けなくなってしまった。




(今、なんて…?)



「俺、初めて人を好きになったらか…どこからが好きなんだろう、ってずっと考えてて…結局答えが出なくて…雲雀さんなら、何か分かるかもしれないと思ったんですけど…」





知らないよ、そんなこと。



だって僕が特別に思っているのは君だけだから…




そんな君から、好きってどんな気持ちかなんて聞かれても、答えられないよ…




綱吉には、好きなのかもしれない人がいるんだね。




そう自覚したとき、胸の奥でギシギシと鈍い痛みを感じた。


泣きそうなくらい、痛くて、痛くて…



雲雀は綱吉が授業に戻っていった後も、動けずにいた。





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