その他

□畏れ知らぬ愛故
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深夜にふと目を覚ましたピノクルはいつも皆が集まるフロアへと何気なく足を運んだ。理由はピノクルにさえ分からなかったがなんとなく。ただなんとなく“誰か“に呼ばれたようにはたまた身体が引き寄せられるようかのように足を運んだ。

ドアを開くと綺麗な月明かりが部屋を照らしていた。が、よく見ると窓辺に誰かが座っている。まるで外敵から自分を守るように丸まって。ピノクルは一瞬誰か分からなかったが月明かりによってキラキラと光っている髪色、今にも消えてしまいそうな小さな後ろ姿。それだけでピノクルは誰だか分かった。しかし声はかけるという選択肢はなかった。見慣れているはずのその後ろ姿から考えが読み取れなかったからだ。

しかしピノクルは声はかけずにその小さな後ろ姿にゆっくりと近づき後ろから優しくでも強く抱き締めた。腕の中に収まった小さな身体はぴくりと動いたがそれ以上は反応はなかった。が、暫くすると肩が小さく上下しだし喉からやっとの想いで絞り出したかという声が漏れた。今まで一緒にいた中で初めて聞いた声だった。そう、か細い泣き声だった。

「う…、うぅっ…」

と、小さな泣き声は耳を澄まさなくても聞こえるのはきっと部屋が怖いぐらい静かな
せいだろうか。また彼の想いが面(おもて)に出ているせいか。それに至ってはピノクルには分からなかった。でも今はただ涙を流しているであろう彼の側にいよう。今のピノクルにはその考えしかなかった。ただ黙って優しく抱きしめ彼の言葉を待つ。言葉を発するのに時間がかかっても例え言葉を発しなくても待ち続ける。ピノクルはその一心でまた抱きしめる手を強めた。その時だった。彼がやっと口を開いたのは。

「…ん、ピノ、クル…くるし……」
「……。…なんだぁバレてた?」
「……こんな、ことするの…、…ピノクルぐらい、でしょ」
「それもそっか」

ピノクルはクスリと笑いながら月明かりで輝く髪をそっと梳いた。それを彼はフフッと小さく笑いながら受け入れた。

「ずっとこのまま時が止まればいいのにね」
「なにそれ。そんな口説き文句可愛い女の子にしか言わないじゃないか」
「え〜、そうだっけ〜?」

彼がちょっぴり不貞腐れているのかはなんとなく分かった。でもピノクルはそれがなんだか嬉しかった。ただこうやって彼と話すだけなのに、普通に会話しているこの時間が心底嬉しかったからだ。いつもは根を隠すピノクルだがこの時ばかりは不思議とこの時間を彼と楽しんだ


「……これからもずっと隣にいないと許さないよ」
「当たり前。フリーセルの横は俺だけの場所だからね〜」

隣にいろなんてなにを今さら、とピノクルは思ったがあえて口には出さなかった。ピノクル自身も彼の側に横にいたいのだから。

「そんな歯が浮くような台詞よく言えるね」
「ん〜、相手がフリーセルだからかな」
「…、…あっそ」
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はい、ピノフリです。
ホイピノの次に好きなかぷです。
実はついったで投下したのを編集しました←

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