おはようとクラスの友達に挨拶をしつつ、いつものように席に着いて教科書やノートを机に入れる。

何気ないその動作で違和感を覚えたのは偶然だった。

机の奥まで入れたハズの教科書達が、同じ大きさなのに不自然な曲線を描く。

何だろう?と膨らみの先へ差し入れられた私の指先は、少し固くて厚みのある紙を探り当てた。

…見覚えのない、クシャリと皺の寄った真っ白な封筒。

そっと机の中で丁寧に皺を伸ばしたものの、今すぐ開けるのは何故だか躊躇われて、そわそわしながら1時間目の授業を待った。

誰にも邪魔されない授業中に先生が長々と板書している隙を見て開いた手紙にはたった一言。

『きみに伝えたいことがあるので、放課後、校舎裏に来て下さい』

文字の大きさが微妙にバラバラで、でもしっかりした力強い文字を私は知っている。

放課後まで私はどう過ごしたか覚えてないけれど、その文章を書いたであろう相手のことしか考えてなかったのは間違いなかった。

校舎裏は運動部の倉庫が並んでいて、あまり見通しが良くない。

暫く待った私の前にひょっこり現れた有利は目を丸くして持っていたボールを落とし、その場にしゃがみこんだ。

「有利、大丈夫!?どっか痛めて…」

「ごめ、おれ、もうダメだと思って…!」

聞けばあの手紙は数日前に送ったもので、有利は言いたいことを察した私が断るのが心苦しくて来なかったと思っていたらしい。

へにゃりと笑う有利に固まった私を、彼は小首を傾げて覗き込んだ。

「…有利、今の、もう言ったも同然なんだけど、その、よければ…ちゃんと聞かせて?」

みるみる赤くなった顔が、それでも精一杯真剣な表情を作る。

びっくりするほど大きな声で右手を差し出しながら言われた言葉に、負けないくらい声を張って私は笑顔で返事をしたのだった――






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