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□姫と猿
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「やっほー名無しさんちゃん」

「出たな猿飛佐助!さっさと帰りやがれ!」

 
 神出鬼没の変態、猿飛佐助。これでも武田軍の忍らしい。そうとは思えないけど。この男は決まって城に兄様や小十郎が居ない時に来る。


「今日はお仕事なんだよー。名無しさんの兄様にお手紙届けに来たんだよ」
「名前で呼ぶな!気持ち悪い!」
「じゃあ何て呼べばいいのさ」
「いっそ話しかけないで」
「まーたそんなこと言って〜!」


 馴れ馴れしいのよこの男!もうホント嫌になっちゃう。イライラするのよ。どうせ他の女にも同じように言い寄っているんでしょ?私は他の女と違うんだから!絶対にアンタには騙されないの!


「政宗兄様なら上田に行ったわよ」
「え?マジかよ」
「本当よ。そういうわけで帰って」
「んー。まぁいいや!俺様とお話しようよ」
「嫌!私は今から本を読むの」
「あのね昨日旦那がね…」
「これ以上ここに居座るなら小十郎呼ぶわよ!」

 小十郎はたぶん畑に居るはずだから、ここから叫んだらすぐに来てこの男を追い払ってもらえる!


「小十郎さんなら名無しさんの兄様と上田に行っているよ」
「えー畑じゃないのかー……って何でアンタが知ってるのよ!?」
「秘密。んで今この城には俺様と名無しさんだけ」
「なっ……!」

 
 なんで女中も兵士も居ないのよ!意味わからない!助けて!誰か私を助けて!へるぷみー!(この呪文は大変な時に唱えたら政宗兄様が来てくれるという謎の呪文)




「てゆうかさー名無しさんは何でそんなに俺様を嫌うわけ?」
「私の本能が貴方を拒絶してるからよ」
「うわー俺様超悲しいー」
「いいから早く帰れ!………あ、兄様だ!」

 
 
 あの謎の呪文のおかげだね!政宗兄様大好き!猿飛はやく消えろ!



「ゲッ!何でこんなに帰って来るの早いんだよ!」
「伊達家の呪文を唱えたからよ!さぁ早く帰れ二度と来るな!」
「しょうがないなー。んじゃ今晩また来るね!」
「来るな!」


 猿飛はヘラリといつものように笑っていたが、突然私の頬に手を当ててすごく真剣な顔をした。はじめて見る顔に思わずドキッとしてしまう。



「は……!?」


 猿飛は私の頬にせ、せせせせ接吻とやらをした。私のふぁーすと接吻が…!



「んじゃね」

 
 猿飛はニコッと笑って、影に潜って消えてしまった。






「Hey名無しさん!大丈夫か!!?」
「に、兄様っ」
「…どうしましたか?お顔が赤くなっておりますぞ」
「こ、小十郎」




 絶対に、絶対に好きにならないって。あんな奴最低な奴だって。そう、分かってたのに。




「猿飛の、ばか…」


 本当はなんとなく分かってた。兄様達が居ないときに城に来るのは、1人で居る私のためじゃないかって。あの男は私が1人が苦手ってことを知っているんだろう。




「………猿飛、」



 私が貴方のことを好きになってることも、気づいているのかな?





end

ありがちネタですみません。
ヒロインに「猿飛」って呼ばせたかっただけ。
 

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