TIGER & BUNNY

□僕はこんなにも、君に翻弄されているのに。 *
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「…っ、ぁ、……っはぁ」



もう、どれくらい時間が経っただろうか。

後ろから腰のラインを掴まれてゆるゆると、抽挿を繰り返されて。時々、不意に思い出したかのように強く奥に突き刺しながら、律動を早める。

そして、イきそうになるのを感じると
また、ゆるゆるとした抽挿に戻されてしまう。

もどかしいったら、ありゃしない。

絶頂の近くまで、持ち上げられたと思ったら
落ち着くのを待ち、また持ち上げられる。
イきたくても、イけやしない。


最初は、四つん這いで受け入れていたが
何時しか身体中から、力は抜け
肩はがくん、とシーツの上に崩れ落ち
そこにあった枕に顔を埋め。

虎徹に、腰を支えられていなかったら全身、シーツにぺたりと伏せてしまっているだろう。

上手く酸素が吸えなくて、息苦しい。
しかし、顔を上げる力がない。
身体が動かないのだ。

自分の意識とは無関係に、開いた口から
発せられる声は、枕の綿たちに吸い込まれる。



「っお前、苦しく、ねぇの?」



それじゃ、息出来ないだろ…と抽挿は止めずに、虎徹の、少しだけ上ずった声が響く。
声を発しても、虎徹に届く訳もなく、何も答えられずにいるともしかして、感じすぎて力が入らない?という楽しそうな、余裕そうな声が耳元でした。

何だか、悔しくて、恥ずかしくて。
自分の唇を、きりっと歯を立ててみる。



「そんな感じてくれるのは、嬉しいけどっ…
 名前の可愛い声、聞けないのは残念だな。」



胸の前に、手がさしこまれたかと思うと
そのまま持ち上げられ、くるりと視界が反転する。

月明かりと、ベッドライトしか光がない部屋のなか、ぼんやりと汗ばんだ虎徹の顔が目にうつる。

自分は、こんなにも虎徹に翻弄され、余裕がないというのに。

この男は、汗こそ流しているが、余裕そうな表情で自分の事を見降ろしている。



「…ず、るい。」



つい、口に出してしまった。
発した声は、本当に小さなものだったが
それは、虎徹の耳にも聞こえたらしい。

未だに、ゆっくりとした律動を繰り返しながら
何がずるいのか、と虎徹が疑問を投げかけてくる。

答えずにいると、言えって、と強く突かれる。



「う、あ、ぁ…だって、ぁ、虎徹ばっかり…あぁ!よ、ゆう…くぁ、そう、だからっ!」



喘ぎながら、必死に言葉を紡ぐ。
はぁ?と間抜けな声を出して、虎徹が動きを止める。



「誰が余裕そうなんだよ。」



「はぁ、はぁ…虎徹、顔色ひとつ、変わらないんだもの。」



ちょっとだけ、拗ねたように唇を尖らせる。

と、いきなり激しい律動が再開され、
思わず大きな声を発してしまい、吃驚して唇を噛む。

傷になるだろ、と虎徹の唇を重ねられ、舌を突っ込まれる。虎徹の舌が口内にある以上、噛むわけにもいかず。喘がれる声は、虎徹の中に消えていく。

しばらく、激しい律動と舌の動きに翻弄されていたが、口を閉じる力すらも、吸い取られてしまった事が分かると唇を離し、耳の横に唇を移動させる。



「名前…。」



低い、擦れた声を耳元で発せられ
全身が、ぞくりと泡立つ。



「俺が、余裕なわけ、ないだろ。」



目を開ければ、真剣な顔をした虎徹と視線がぶつかる。時々、何かを耐えるように寄せられる眉が何とも艶めかしい。

ぽたり、と虎徹の額から汗が落ちた。



「名前を目の前にして、余裕なんか、
 本当は、ないってのっ!」



「あ、あっ、あぁ…!」



「いい年して、余裕、見せたいだけなの!」



再び、唇を塞がれる。

下からも、上からも虎徹に思うように攻められて。先ほどまで、ゆらゆらと絶頂との狭間を彷徨っていた意識は、いっきに高みまで、持っていかれる。



「あ、駄目、虎徹っ!」



「やべ、もう、俺もっ!」



腰を掴み直したと思うと、抽挿を早める。
がつがつ、という音が聞こえるんではないか、というくらい腰を打ちつけられ、びくびくと身体が痙攣するのが、自分でも分かる。



「も、イク…あ、ああぁぁっ!」



「名前…くっ、ぁっ!」



くっと名前の身体に力が入ったと思うと、すぐに、くたんと力が抜けた。

その0.2秒後、虎徹が小さく喘ぎながら欲望を解放する。

名前の顔の横に、腕をつき
お互い呼吸を乱していたが、どちらからともなく唇を合わせた。



余裕がないのは、お互い様。

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