企画用

□一周年記念 方術士見習いと和のこころ
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 一見、興味がないようにそっぽを向いているゲンサイだったが・・。

「・・・ん?」

背後に何度か視線を感じてエミリオは振り返る。しかもその全てが手紙に目を向けている時に感じる。手紙に意識を集中する、視線を感じる、振り返る、誰も居ない、手紙に意識を集中する、視線を感じる・・・。

「て・・・気になるんなら、一緒に見ればいいだろ!!」

エミリオが、振り向きもせずに叫ぶ。振り向かなくても分かるというよりも、振り向いてもその時には気配も視線も姿も消えているのだから、その行為に意味は無い。
後ろからばつの悪そうな顔を浮かべたゲンサイが現れる。子供か!とエミリオは思ったが、言わないで置いた。

「ふむ、何時から気づいていたのかな?」
「そんな推理小説地味た台詞言ってもまるで、威厳がない。」

エミリオが呆れて言った。ゲンサイはエミリオの持っている手紙を一瞥する。

「で、どうするんだ。今年から方術士になる者にはアーストリア軍への入隊義務が生じるそうだが・・・。」

今、エミリオが持っている手紙の内容はまさにそれだった。方術士になろうという希望を持つ子供たちに渡される手紙・・・先の大戦でアーストリア軍は方術士の力を見ている。

生身一つで戦車を倒す者、銃弾を弾くもの、砲弾の爆風から味方を守る者・・・1人2人で軍隊と戦えるような実力を持つ者たちを戦力として使う事になんら躊躇いをもたない者達。かつては信濃国の政府がそうだったようにアーストリア政府も同じように考えている。

一方で、彼らを戦力として使う事に反対意見を持つ者が信濃、アーストリア国内で現れ始めているのも事実だった。そう言う人々はそもそも新兵器の開発、軍備の増加に反対する人々でもある。先の大戦が終わる頃から現れ始めた新たな意見・・・。無残、残酷な戦場を未来に作りたくないと思った者達の・・・。エミリオはその事について考えていた。そういう人もいるという事を聞いてから・・・。

「なー、これ、はいやりますって言ったら怒る?」
エミリオが手紙をぺらぺらと振りながら言った。

「まあ、な。」即答。エミリオは顎に手を当てて唸る。それを見てゲンサイは「しかし」。
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