present
□好
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ポンポン
誰かが私の肩をたたいた。
「だぁれ?」
私は目が見えないが、とりあえず振り向く。
しかし声はない。
かわりに私の左手が握られた。
すぐに彼だと気が付いた。
「辰巳くん?」
手がぎゅっと握られる。
どうやら正解のようだった。
思わず頬が緩む。
「どうしたの?」
『おくってく』
私の手のひらに文字がかかれた。
少しくすぐったいが、これが私達にとっての会話だった。
はじめは読み取るのが難しかったが、今ではお互いもう慣れてしまった。
「ありがとう。」
寮まで送ってくれるのでお礼を言う。
いつものことなんだけどね。
辰巳くんの制服のすそをつかむ。
てくてくてく。
ぴたり。
突然、辰巳くんが立ち止まった。
部屋に着くには早すぎだし…かといって先に進めない理由もいまいちわからない。
目が見えないって不便だなぁ。
「どうしたの?辰巳くん」
すそをつかんでいた私の手を、辰巳くんがつかむ。
「?」
手のひらが上になったので、何がかかれるのか気になった。
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