present

□好
2ページ/4ページ

ポンポン

誰かが私の肩をたたいた。

「だぁれ?」

私は目が見えないが、とりあえず振り向く。
しかし声はない。
かわりに私の左手が握られた。
すぐに彼だと気が付いた。

「辰巳くん?」

手がぎゅっと握られる。
どうやら正解のようだった。
思わず頬が緩む。

「どうしたの?」
『おくってく』

私の手のひらに文字がかかれた。
少しくすぐったいが、これが私達にとっての会話だった。
はじめは読み取るのが難しかったが、今ではお互いもう慣れてしまった。

「ありがとう。」

寮まで送ってくれるのでお礼を言う。
いつものことなんだけどね。
辰巳くんの制服のすそをつかむ。

てくてくてく。

ぴたり。

突然、辰巳くんが立ち止まった。
部屋に着くには早すぎだし…かといって先に進めない理由もいまいちわからない。
目が見えないって不便だなぁ。

「どうしたの?辰巳くん」

すそをつかんでいた私の手を、辰巳くんがつかむ。

「?」

手のひらが上になったので、何がかかれるのか気になった。







_
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ