作文。

□傍観者
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オレは三橋って、多少しゃべり方たどたどしいってくらいで別に他のやつと変わんねー普通のやつだと思っている。

なぜか田島ともウマが合うようでいつも一緒にいるし、そのおかげかクラスメートとは結構普通に話せている。
田島は男子みんなと仲良いからな。
田島と一緒にいれば自然に男子の輪の中に入ることが出来るし、女子なんかには「三橋くんて面白いね」って笑いかけられているのもよく見かける。

とにかく、三橋はオレらから言わせりゃ普通のやつなんだ。




「三橋、今日の体育バスケだろ。」
「う、ん!」
「むやみにパスもらいに行ったりすんなよ。なるたけボールに触るな。突き指なんかしたら大変だからな」
「お、わかっ、た!」

朝練前の阿部と三橋の会話。
出た、阿部の命令口調。


ったく毎日毎日、あーしろこーしろって口うるせーったらない。
言われなくてもわかることをいちいち言ってくるからうぜーんだよ。

よく飽きねーな。


野球の守備はポジション毎にその役目は大きく異なっている。
まず内野と外野では守備のやり方が全然違うし、その中でも投手と捕手はまた別格だ。

いわゆるバッテリーの守備における責任の重さは他のポジションの比ではない。

捕手のリードと、それによる投手の投球からゲームは始まる。
その球が打者に打たれるか否かで試合は大きく変化する。

まさにバッテリーはチームの守備の要なのだ。


しかもうちの場合、部員はたったの10人。田島や花井、沖が控えにいるとしても、とてもじゃないがすげ替えはきかない役目なんだ。

オレはどちらのポジションの経験もないけど、それくらいはオレにだって十分わかる。

しかし、それを差し引いても阿部の過保護っぷりは尋常じゃないぞ。
ふつーノートの切れっ端にまで気をつけろとか言わねーだろ。
……オレが三橋だったらホント耐えらんないと思う。


でも三橋は、逆にそれがすごく嬉しいらしい。
阿部に心配される度に喜んでんのが顔見ればわかる。
その辺はよくわかんねーんだよな。
理解に苦しむというか。

ま、三橋の中学時代の経験を考えれば仕方ないことなのかもしれないけど。
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