作文。
□バッテリー
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「おーしっ!あと三球!!」
ジリジリと照りつける太陽の下。
強い日差しが容赦なく体に突き刺さり、気持ち悪いくらいにぬるい風が、日陰のない渇いたグラウンドを吹き抜ける。
暑さを蹴散らすようにあちこちから部員達のかけ声があがり、その声を背にしながら三橋は目の前のミットを静かに見据えた。
18.44メートル。
投手と捕手の物理的な距離。
近いようで、ひどく遠くも感じる。
三橋にとって、この距離は特別だった。
正確にいえば、この距離の先に捕手が座っていることが、だが。
「ストライークッ!!いいぞーみっはしー!!」
元気いっぱいに球を投げ返してくるのは、正捕手の阿部ではなく田島だ。
三橋と田島は普段から仲がいい。
中学まで友達もできず、コミュニケーションの苦手な三橋にとって、常に全力でスキンシップを図ってくる田島の存在はありがたかった。
「ラストあと一球!!…おーしっ!こんなもんだろ」
「お…おーっ」
「いやー今日はあちーなっ!!こんな日は防具が重いぜー!!」
「そっ、だねー!」
「でもえらいな三橋!暑くても疲れててもコントロールばっちりだもんな!」
「ふへへへ…」