作文。

□野球バカ
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西浦高校の野球部に入部して、早4ヶ月経った。

この4ヶ月の間、クラスメートによく言われるセリフがある。

それは、
「水谷くんて野球部っぽくないね」だ。







朝練が終わり、教室へ向かう。

誰もいない教室は静かで、かすかに木の匂いがする。

また日が昇って数時間しか経っていないからか、教室内の空気はまだひんやりとしていた。
その空気に早朝から一汗かいて火照っていた体が、少しずつ冷まされていく。

今からSHRが始まるまで宿題を片付けなければ。

それでも、頭の中はまだ野球のことでいっぱいだった。

中学でも野球部だったけど、今ほど一生懸命にはしていなかった気がする。
嫌で仕方なかった練習も高校に入ってからはやけに楽しくて、放課後になるのが待ち遠しい日すらある。

……オレ、だいぶ野球にハマってねぇ?

同じクラスの花井と阿部もやって来た。
篠岡は数学準備室に寄ってくると言っていたのでまだ来ない。

「花井、英語教えて」

眼鏡をかけて教科書を広げる花井のところに駆け寄る。

花井が返事をするのを待たずに前の席の椅子に座って花井のノートをのぞき込んだ。

そんなオレに、花井は呆れた表情で
「お前、答え写すだけだろ……」
と言う。

「そんなことないよ!」

「ほんとかぁ?」

花井はいつものように頭に白いタオルを巻き、でっかい手でシャーペンをクルクルまわしていた。

「ついでにオレも写そ」

「だから写すなっての!」

いつの間にかひょいと阿部も近づいてきて、3人で花井の机を囲んで勉強を始めた。

所々わからないところは教えあいながら進めていく。
とはいえオレは教わる方専門だけど。

花井も阿部もなかなか頭がいい。
オレが苦戦している問題を2人ともスラスラと解いていたりする。

普段怒りっぽい性格の2人だが、わからないところを聞くと意外と丁寧に教えてくれる。

2人とも兄ちゃんだからな、オレはついつい甘えてしまうんだ。
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