邪馬台幻心夢(後)
□今の自分に出来ること
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「俺は強大な力を持った君に少し萎縮していたのかもしれない。だがこうして腹を割って話してみれば…君も幻想郷の彼女達と変わらない1人の女の子だった。だからちょっと安心したのかもな…」
「1人の女の子…そんな風に言われたの初めてだわ」
「良かったら純狐やクラウンピースのこと…そして勿論ヘカーティア…君のことも色々教えてほしい」
「!」
「あの時は君達を敵としてしか認識していなくて君達のことを知ろうともしていなかった。だが今の俺なら…君達を受け入れる余裕もある。だから今度は…みんなで幻想郷に遊びに来れば良い。月は難しいが此処なら君達を歓迎してくれる」
「ラスティ…」
「地獄よりもよっぽど楽しい刺激が沢山あるぞ」
「えぇ…えぇ…そうね。今度は…みんなで…!」
形容し難い気持ちがヘカーティアの中に満たされていくのを感じた。だがそれは暖かく安堵出来る光。それに身を委ねてしまっても良いと思える程の高揚する気持ちはヘカーティアを笑顔にさせた。
「ありがとう…」
「俺は何もしていない」
「私も今度改めて2人に貴方を…いえこの幻想郷を紹介しようと思うわ」
「あぁ」
「じゃあ…紫苑捜索を再開するわよラスティ!」
「そうだな。宜しく頼む」
それが例え何気ない一言だとしても確かに気持ちは伝わった。それだけで変わるには十分な理由になった……今の自分には何が出来るのか…それが少しずつ分かってきた少年少女青年達は前を向いて歩き出す。
だが…希望に染まる者達が居れば絶望に呑まれてしまった者も存在する。繋がりを失い、繋がりを棄てて、全てを断ち切った少年は心に再び大きな風穴を空けて…生きる希望を失っていた。
「………」
設けられた人工呼吸器がシュコゥ…と音を立てて意識を失う少年に酸素を送る。体中に包帯が巻かれた状態でベッドに横たわり、心音を示す機械の音が部屋に谺する。翳戔との戦いで負った身体的傷、旅で負った精神的傷に蝕まれた心は未だ崩れたまま深い眠りから覚めない紫苑。そんな彼の手に触れて常に側を離れず彼が目を覚ますのをジッと見守る少女の姿があった。
「…紫苑」
彼女の名はこいし。陰陽連の本部に単身乗り込んで今は誰の認識も受けない無意識の化身と化し、1人紫苑の目覚めを待ち続けている。また彼が立ち直ってくれる為なら自分はなんでもする……そんな覚悟を持って此処に来たこいしの顔は希望と絶望の間で揺れていたが…片時も紫苑から離れることはなかった。
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