野良猫幻想夢(低)

□蘇る悲劇の過去
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声で振り向いた霊夢の視界に映る彼…現実
世界の服を着て肩まで襟足が掛かる白銀の
ミディアムヘアが特徴的な少年。優しい声
…優しい瞳……全てが忘れもしない…

「零…射…」

霊夢はその少年の名を言った。目の前に
現れたこの少年の名は森羅 零射だった。
2年半前に死亡した霊夢の最愛の人間…
もう逢うことの出来ない零射の姿や声に
衝撃を隠せず霊夢の胸はズキッと軋む…

「どうし…て…」

眉に力が入ってしまう…唇を噛んでしまう
…震えてしまう声で霊夢は零射に問う。

「逢いにきたんだ」

「!」

「また霊夢に逢いたくなったから」

「でも零射は…あの時完全に!」

動揺を隠せず呂律が回らなくなる霊夢の
血相を見た零射は懐かしく優しい表情で
霊夢に歩み寄るとそっと抱き寄せる…

「逢いたかった…」

「!!(この感触に匂いは間違いない……私の知ってる…零射だ)」

密着する体から伝わる温もりや匂いはよく
知る自分の愛した男のものと偽りはない。
全ての懐かしい感覚に霊夢はさっきまでの
表情が一転して嬉しそうに…零射をそっと
抱き返した。触ることが出来る……それが
霊夢にとって何よりも嬉しいことだった。

「ホントに…零射だわ…」

「だから言ったでしょ?僕は零射だって…君が愛してくれた…」

「…っ!あれから本当に…色々あったんだから…本当に辛かったんだから…っ!!」

「ごめんね…」

もう二度と逢えない自分の愛した彼と再び
再会した喜びに霊夢の瞳からは大粒の涙で
溢れる中零射は優しく霊夢の頭を撫でた。






「でも…どうして零射がこんなとこに居るの?そもそも此処は…何処なの?」

「………」

「けど今は…そんなのどうでも良いわ……また零射と逢えたんだもの…」

落ち着いた霊夢が零射の服を握る手に力が
入るのを感じて零射は懐に視界を向ける。

「もう逢えないと思ってたから凄く嬉しい……だから話す(離す)前に…もう少しだけこうさせて…」

霊夢はそっと目を瞑りその懐かしい感覚に
身をずっと委ねていた。嬉しくて嬉しくて
今の霊夢は周りが見えていなかった…

「………」

優しい笑みが消えた零射は右手を翳し突如
出現した黒い持ち手に三日月の形状をした
刃先の鎌を握る。持ち手の下に装飾された
黒い鎖が揺れる中零射は霊夢へ視界を向け
……愛した者へその鎌を振り下ろした。
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