邪馬台幻心夢(前)

□今どきギャル娘と清く正しい射命丸
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現在紫苑達が歩く森は妖怪の山と呼ばれ、幻想郷で森林や山道などは一括りにこの名で呼ばれている。海のない幻想郷では妖怪の山が地形の6割以上を占めている為、地理に詳しくなければ現在地を把握することも出来ない。フリージアは慧音から幻想郷の地図を貰ってはいたが、実際に人里の外に出たのは初めてであるので名称などに乏しく、まだその地図が活かされる機会はなさそうである。

一括りに妖怪の山と呼ばれるが、その中に聳え立つ建物もいくつか存在する。そして、とある区域を哨戒する者達もこの幻想郷には存在している。今回の章は、その区域で縦社会を築いている天狗達とのお話しである。

「…視線を感じるな」

「視線?」

「…!」

その突き刺さる視線に最初に気付いた紫苑は警戒して2人に注意を呼び掛ける。すると茂みから飛び出したのは白銀の獣耳に立派な尻尾を生やした3人の白狼天狗達だった。剣と盾を握りしめ、紫苑達の道を立ち塞ぐ様子からして歓迎はされていないようだ。

「…コイツらは?」

「妖怪の山の天狗の里周辺を哨戒する白狼天狗だ……こんなとこまで踏み込んでたのか俺らは!」

「マズいのか?」

「妖怪の山にも領土ってのがあって、この辺は天狗の管理してる区域なんだよ。お前も幻想郷の住人なら少しは勉強しとけよな!」

「へいへいどうせ俺は世間知らずな外来人だよ」

「お前達人間だな?此処から先は天狗の管理する区域に入る」

「速やかにお引き取り願う」

「さもなくば…」

握られた剣を向けて警告を促す白狼天狗達の態度に紫苑はムスッとした態度で言い返そうとする。だが紫苑が言葉を発する前にフリージアがポケットから取り出した1枚の紙を見せて白狼天狗達に返答を返した。

「私達は人里から来た者です。此方は慧音先生から預かった通行許可書になります」

「その筆跡は…文殿の発行したものか」

「ならば此処を通る資格はあるようだな」

「今し方の無礼を失礼した。通ると良い」

フリージアの出した紙を見た瞬間態度が一変した白狼天狗達は握っていた剣を鞘に収めると頭を下げて先程の非礼を詫びて再び哨戒の為に茂みの奥へと消えていく。それを見て紫苑は頬を指先で掻きながらフリージアに言った。

「あんなに警戒してた癖にそんな紙切れ一枚でコロッと豹変したな」

「天狗さんは掟に厳しい一面もあるけど掟を反さなければ危害を向けたりはしないよ」
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