邪馬台幻心夢(前)
□水龍玉女
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3人に向けて流れ落ちる水龍の一撃。それが3人へ到達しようとしたその時だった。温泉の石段から降りてきたダークグリーンのコートを纏う男はフードに掛けられていたサングラスを耳に付けて隣を歩く少女の頭に触れながらやれやれとため息を吐いて言った。
「全く…暫く平和だと思ったらこれだ」
「でも助けちゃうんだ」
「温泉の営業を守るだけだ……いくぞメリル、久々で忘れてないだろうな?」
「大丈夫だよヴェターク」
「サリィヴだ」
「ごめんごめん…じゃあ行くよ」
「「『リアネイド』」」
その男は嘗てクリードと共に幻想郷を強襲した者であった。地獄に幽閉されたこともあるSSクラスの妖怪の1人で黒い夜叉の異名を持ち、妖怪と人間の種族を2つの肉体で分けた2人が再び1つに融合することで真の力を発揮することが出来る。リアネイドという言葉でメリルの姿が黒い黒刀へと変化し、それを握りしめてサリィヴは水の龍へと迫る。
「『武士の一太刀』」
黒刀から黒いオーラを放ち、空中で龍は真っ二つにされるとコントロールを失った龍はお湯の塊となって妖怪の山に落ちる。突然の介入に蒼xは勿論紫苑達も驚いていた。
「な、何!?なんなのよアンタ!?」
「お前は…」
「さっきのおっさん!」
「え、お知り合いなの?」
「温泉で少し話したんだけどよ……それがまさかこんな鬼強な人だったとは…人は見掛けじゃねぇな」
「…悪いな。別に私情を挟んだワケじゃねぇ……俺は少し前までそこの温泉の治安を守ってたもんでな。契約は切れたがだからって見過ごすワケにもいかねぇだろうよ」
「治安?契約?貴方さっきから何ワケの分からないことをブツブツと…!」
「お前の力は此処らの治安が乱れる……退きな。それがお互いの為だ…」
「はぁ!?目の前にターゲットが居るのに退く理由なんてあるワケないでしょ!?」
「なら…仕方ねぇか。俺も戦いたくなんざねぇが…意を貫くにはこれしかねぇもんな」
そう言って黒刀を向けて闘気をぶつけるサリィヴ。彼から伝わる気迫に蒼xも何かを感じたのか手に持っていた心具を消して両手をフリーにしながら返答を返した。
「あーはいはい。分かったわよ……アンタなんか闘りにくそうだし場所と日を改めることにしましてよ」
「待て…蒼x!まだ俺との決着は…!」
「安心なさい。こっちも体勢を整えたらすぐに潰しに来てあげるから。その時まで御機嫌よう」