邪馬台幻心夢(前)
□水龍玉女
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「ううん良いの!私が勝手にやったことだし」
「………」
「でも関係ないって言われたのはちょっと傷付いた。というか怒ってる」
「!」
「そうだぜ紫苑!まだ旅は始まったばかりだが俺達は同じ旅をする仲間だろうが!まぁ俺とお前は永遠のライバルだがな!」
「一蓮托生って前に言ったじゃん。私達は紫苑君のこと頼ったりするけど…紫苑君ももっと私達のことを頼ってほしいよ」
「…だが俺のやろうとしていることは只の…」
「テメェ1人で背負い込むんじゃねぇ馬鹿が」
「!」
「…私達も私達なりに出来ることをしたいの。紫苑君が苦しむ姿…見たくないし…」
「レンザ…フリージア…」
「勿論紫苑君の気持ちも分かるよ。お父さんを殺した人を許すことが出来ないのも……私もレンザ君も…両親は異変で死んじゃったから紫苑君の悲しみだって理解出来る」
「………」
「紫苑君には幸せになってもらいたいの。だからさ…私達にも手伝わせてよ……紫苑君が幸せになれる旅を……何が一番幸せな形になるかは私達もまだ分からないから…もっといろんなところを旅して…世界を一緒に学ぼう?」
「学ぶ……俺が学ぶこと…この世界で…」
紫が、慧音が、早苗が、そしてフリージアがこの世界で学べることは沢山あると告げてくれる。復讐心に染まった心に僅かに差し昇る光が少しずつ狭くなっていた視野を照らしてくれた。自分の幸せとは何か……この世界で学べることはまだまだ沢山ある。それを教えられて紫苑は今自分が抱く複雑な気持ちを言葉にすることが出来ず黙りだが、その表情は蒼xと戦う前より大分明るくなっていた。
「続けるんだな旅を」
「当たり前だ……まだ何も終わってない」
「始まってすらないだろ?」
「…あぁ……そうだな…」
「えへへ…改めて宜しくね紫苑君!レンザ君!」
「おぅよ!紫苑よりも活躍してみせるぜ!」
「それはねぇよ」
「だとぉ!?」
「…良いね。支えてくれる仲間が居るって…」
「…そうだな」
嘗て魔界で自分達を支えてくれた仲間達のことを思い出してサリィヴとメリルは遠くを見つめながら少し淋しそうな顔をする。
「てか…俺の中のモヤモヤが晴れたんだ」
「いきなりなんだよ」
「サリィヴ……俺はアンタの顔をどっかで見掛けたってさっき言ったけどやっと思い出した。アンタを見掛けたのは2年前の新聞の記事……アンタの本当の名前は…ヴェターク・リアネイドだろ?」