邪馬台幻心夢(前)
□水龍玉女
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「紫苑君!レンザ君!」
女性の後を付けてフリージアも合流する。まさかの遭遇に女性は顔を顰めてため息を吐いた。
「…本当今日はツイてない日だわ。もう少しこの世界を観光しようと思ってたのに…こんなところで裏切り者と出会すなんてね」
「相変わらずどこまでもふざけた野郎だ……俺はアンタを…いや…陰陽連をずっと探していた」
「先に消えたのはアンタの癖によく言うわ」
「蒼x…」
「もう少ししてからもう一度私の『ナイト』でアンタを襲わせようと考えてたけど…予定変更。ここで片付けてあげる」
そう言って右手を前に向ける蒼x。すると水が集まり1本の長い薙刀へと形状を変える。水色の持ち手に蒼い刃先、見るからに水の性質を持ち合わせていそうなデザインである。
「あれって…紫苑君の剣と同じ…」
「精神の武器か!」
「『水龍槍』……心具の強さは精神の大きさで決まりますことよ。組織に反逆した裏切り者なんかにこの蒼x…負けるワケありませんわ」
「ほざいてろ…すぐに証明してやるよ。レンザ、フリージア…これは俺の戦いだ。手を出すな」
「おい紫苑!」
「紫苑君の旅に参加した以上私達だって…!」
「俺の復讐にお前達は関係ない!」
「このっ…!」
「紫苑君…」
加勢しようとする2人に冷たく吐き捨てた紫苑は自身の心具である月読の剣を握りしめて蒼xに刃先を向ける。その顔は復讐心に取り憑かれていた。
「あらあら冷たいことを言いますのね。ここまで私を追ってきた大事なお仲間さんなんじゃないの?」
「陰陽連を潰すのは俺の目的だ。勝手に着いてきたコイツらは関係ない」
「その言葉が本心か仲間を気遣っての言動か……まぁどっちでも良いことですわ。私に課せられた命は貴方を始末することですもの」
「御託は良い…来い蒼x。心武衆は全員殺す……その最初がお前だ」
「殺せるものなら…殺してご覧なさい!この第十部隊『完全なる乙女』(アブソリュート・ヴィエルジュ)蒼xが返り討ちにして見せてよ!」
まず最初に攻撃を仕掛けたのは蒼xだった。薙刀の長いリーチを活かした薙ぎ払い攻撃を刀身で受け止めた紫苑は左手を地面に付ける。刹那蒼xの足下から無数の小石が弾丸の如く迫る。
「『浮石弾!』」
「…そんな低級方術に当たると思って?」
迫る小石に動揺もなく蒼xの体に水の障壁が集まると小石は水に呑み込まれて無力化される。すぐさま追撃を仕掛けんと紫苑は月読の剣を掲げるも蒼xの攻撃は先に仕掛けられていた。