邪馬台幻心夢(前)
□水龍玉女
6ページ/11ページ
「足下からの攻撃は貴方だけじゃありませんことよ!『水神暴風撃!』」
「何!?ぐはっ!」
「紫苑!!」
「紫苑君!!」
足下から勢いよく噴き出した水の竜巻は紫苑を呑み込むと中で水の奔流に身動きを封じられ、そのまま木に叩き付けられる紫苑。心具と方術を用いた者達の戦い……それは自分達が思っている以上に凄まじいものであった。能力を身に付けたことで対等に戦えるであろうと思っていた2人だが、実戦を…相手の力量を見せ付けられ体が震えているのが分かる。気持ちでは加勢に行きたいと思ってはいるが体が動かない…
「糞…折角神様に稽古付けてもらったのに…なんで…見ていることしか出来ないんだ俺は!」
「悔しい…悔しいよ…」
「さっきのお返しですわ!『浮石弾!』」
「ガフッ!?」
倒れる紫苑に追撃の一撃を放つ蒼x。それは最初に紫苑が仕掛けた方術と同じものであり、下から飛び出した小石の弾丸が紫苑に直撃する。数十メートルも吹っ飛ばされ月読の剣を手放して転がり回る紫苑は近くの岩場に叩き付けられて動きが止まる。地面に刺さった月読の剣はその場から消えてしまい蒼xは欠伸をしながら言い捨てる。
「復讐だの潰すだの殺すだの大層な言葉を並べても…それに見合う実力がなくちゃ話しにもならないわよね。半年前のあの時もそうだった……1人陰陽連に立ち向かう貴方の姿は実に滑稽でしたわ」
「くっ…」
「心具も消えましてね。まぁ当然の話しだわ……心具は精神の武器であり、迷いのある人間にはその力が応えることはない。仲間と復讐の間で揺れている今の貴方じゃ心具の本当の力を引き出すことは不可能よ」
「黙…れ!」
「言って分からないなら直接見せてご覧に入れるわ!これが迷いのない心具が齎す本当の力よ!!」
そう言って浮遊した蒼xが薙刀を真上に掲げる。すると温泉のお湯が吸い込まれるように刃先の上に集まり、その形は次第に龍へと変貌を遂げる。大量の氣も同時に練り込まれ、それは明らかに並の方術を凌駕していた。
「なんだよありゃあ!?」
「そんな…こんな…!」
「お前ら…逃げ…ろ!」
「無駄ですわ!この技は辺り一面全てを呑み干しますわ!お仲間も一緒に葬ってあげる!!」
「「!」」
「我が心具に集まりし水下の素体よ!個を成し形創られた龍の咆哮の如く全てを呑み干し逆鱗の一撃を与えよ!『水龍咆哮破!!』」
振り下ろされた薙刀の命と共に空中に形創られた龍は全てを呑み干さんと3人へ牙を向く…