邪馬台幻心夢(前)
□豊穣の神
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「…兎に角だ。今此処で考えていても何も進展しねぇんだ。まずはギルドに向かうのを優先しようぜ」
「暗い話題なんて止めて明るく行こうぜー!」
「お前は明る過ぎだメリル」
「いや…メリルちゃんみたいな子が居てくれるだけで空気も大分変わるぜ」
「私達も元気になりますし!」
「…そうか?」
「見たかサリィヴ!」
「そういえば気になってたんだけどなんで偽名なんて名乗ってるんだ?ニットとサングラスとコートまで身に付けて素顔もよく見えねぇし」
「俺も幻想郷全土を一度は敵に回した身なんでな。いくら指名手配から外されようとお前らのように許してくれる連中だけじゃねぇ……この名前と服装はその為のものだ」
「大変なんだな…」
「別に良いさ。仕事には殆ど支障もないからな」
「メリルちゃんは偽名と変装は良いのか?」
「コイツは新聞に報じられていないからな。顔もあの時戦った連中以外には知られていないし隠す必要がねぇのさ」
「なんかあったら私はサリィヴの中に逃げ込むから別に問題ないけどな!」
「全く面倒なことだがな」
「お2人は確か人と妖怪のハーフでしたよね」
「そうだ。俺の『魂を共有する程度の能力』で種族を2つの体に分けることで妖怪のメリルと人間の俺が生まれた」
「つまり私はサリィヴであって」
「俺はメリルでもあるってことだ」
「なんかややこしいな…」
「凄いです!同じ存在なのに性格や性別もバラバラなんですから!」
「…確かにな」
「不思議だなぁ」
「…!」
話しながら歩いていると何か良い匂いがするのを感じて周辺を見渡す一同。すると山の上から狼煙が上がっているのが確認出来る。どうやら何かを焼いている匂いらしい。
「この匂い…焼き芋ですかね?」
「そろそろ昼飯の時間だからな。腹減ったぜぇ」
「行ってみようぜ!」
「…言い出したら聞かないからなお前は」
「サリィヴ…ここで俺は初めてお前に仲間意識を抱いたぜ。俺にも拒否権はねぇ」
「…お前も苦労してるようだな」
「紫苑君!サリィヴさん!」
「おい置いてくぞ2人共!」
「早くしろよな!」
「もうあんなとこに居やがる…」
「どうやら行くしか選択肢はねぇようだな」
「めんどくせぇがこれ以上喚かれる方がもっと面倒だ…さっさと行くぜ」
「それもそうだな…」