邪馬台幻心夢(後)
□次の適格者
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あの衝撃的な戦いの幕引きより数時間後、夜も明けて永遠亭の客間でラスティはレンザと言葉を交わしていた。1日経って少し気持ちに余裕が出来たレンザはここで初めてラスティが此処に居る経由を問うことに。
「お前達の協力もあって月はヘカーティア達の手から取り戻すことに成功した。だが月の賢者達が施した月の都の凍結はそう直ぐに解けるものでもないらしくて2ヶ月以上経った今でも月の都は凍結したままで夢の世界の都に俺達は居る」
「月の連中も…大変なんだな」
「俺達が実質待機命令を命じられていた最中のことだ……豊姫と依姫は俺に偶には帰れと休暇をくれたんだ。最初は断ったが…お前達の顔も見たかったし改めてお礼も言いたかったからな。休暇を貰って幻想郷に来たんだが…」
「…悪ぃなラスティ」
「いや…なんて言葉を掛けて良いのか俺にも分からない……こういう時気の利いた言葉が頭に浮かべば良いんだが俺…不器用だから…」
「その気持ちだけで十分だぜ…」
「…すまない。紫苑には俺からも言葉を掛けたが……今のアイツに俺の言葉は届かなかった」
「良いんだ。俺達の旅はもう…終わったんだからよ」
「お前まで何を…」
「俺達はいつも3人一緒だった。3人一緒だったから…意味のある旅だったんだ。だが…もう3人で旅は出来ない……終わったんだ…俺達の旅は…」
「レンザ…」
「こいしちゃんも昨日から姿を見せないし紫苑の後を追ったのかもしれないな。なら紫苑は…こいしちゃんに任せるぜ。俺は…少し此処で考える……これからの自分が出来ることを…」
「…あぁ。少し休んでゆっくり決めるんだ……自分のこれからの生き方を」
「ラスティはこれからどうするんだ?」
「もう一度紫苑に会って話しをする。昨日はあのまま行かせてしまったが…ほっとけないからな。俺も諦めは悪い方だし」
「じゃあ紫苑の方は…任せても良いか?」
「あぁ。その代わりアイツがまた此処に帰って来た時はお前もきちんともう一度話し合うんだぞ」
「…分かった」
今は自分が代わって消え掛けている繋がりを繋ぎ止める為にラスティは幻想郷で出来ることをしようと動き始める。その旨を永琳に話し終えたラスティが永遠亭を発つと、まず最初に顔を出しておこうと思っていた場所に向けて飛び立つ。
「紅魔館…もうすぐ5年になるか…」
第百X一季の2月に紅魔館を発って再び戻ってきたのは第百X六季の1月だ。ほぼ5年振りとなる帰還で彼女達は変わっていないか少し不安な気持ちもあったがラスティは紅魔館を目指す。