邪馬台幻心夢(後)
□今の自分に出来ること
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時を同じくして紫苑を探して幻想郷を巡るラスティと彼の背中をトコトコ追い掛けるヘカーティア。このなんとも言えないコンビが立ち寄った場所は嘗て紫苑達も利用したリゾート地の遊楽亭だった。
「まさかこんなものが出来ているとはな」
「前はなかった感じなの?」
「少なくとも5年前はなかったぞ」
「じゃあ宿泊も出来るみたいだし今日は此処で泊まっていかない?もう野宿も飽きたわ」
「相変わらずだな君も…」
「ラスティが生真面目過ぎるのよ」
最終的には彼女の根気に押し負けたラスティだが根詰めし過ぎるのも体に毒だと言い聞かしてヘカーティアの提案を受け入れると遊楽亭へと足を運んだ。内装も新しく綺麗な建物で、何より地獄にはない作りをしていることに彼女は興味津々で隅々まで見渡していた。
「やっぱり幻想郷って面白いわねぇ♪」
「すみません、シングルルームを2つお願いしたいんですが…」
「別々の部屋なの?」
「当たり前だ…」
「ダブルベッドの方が安いわよ?」
「シングルベッドで良い!」
「恥ずかしがり屋なの?」
「なんでそうなる!?」
フロントで早速の漫才を終えて2人は温泉に入ってから食事にしようと一旦その場で別れるとラスティは脱衣所で服を脱いで浴室に足を運ぶ。温泉の効能は彼の旅の疲れをお湯と共に流してくれる。束の間の休息に上を見上げて思わず息を吐いた。
「…焦らないようにしないとな」
過去の自分の失敗を再び犯さない為にも心にゆとりを持とうと気持ちを切り替えるラスティ。その頃ヘカーティアは幻想郷の温泉に興奮して一々リアクションを取っていた。
入浴後の食事の時にはヘカーティアから温泉に対する感想を告げられ料理の味があまり頭に入ってこなかったラスティ。彼女に振り回されたまま就寝の時間を迎えて2人は各々の部屋で休むことになる。
ヘカーティアと共に行動するようになってから経過した時間はまだそう長いものではない。だが彼女の印象的な言動は早くもラスティの頭の中に深く刻まれたようで、久し振りにベッドの中で眠りに就いた彼の夢はヘカーティアに首輪を付けられ、鎖に引っ張られながら散歩している自分……そしてそれを遠目から見て驚いているレミリアという自分でもワケの分からない変な悪夢を観ることになった…
小鳥の囀りと窓のカーテンから差し掛かる僅かな日の光で目を覚ましたラスティは変な夢に頭を抱えて困惑しながら目を覚ました…
「…なんて酷い夢を観たんだ俺は」