邪馬台幻心夢(後)
□今の自分に出来ること
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半分悪夢に魘されて目覚めたようなものでため息を洩らすラスティ。だが隣でモゾモゾと動く布団に目を落とすと掛け布団をどかして起き上がるヘカーティアにラスティは驚愕しながら仰け反り、そのままベッドからずり落ちてしまう。
「うわぁぁぁ!!?」
「あらラスティ…おはよう…」
「な、なんで…なんで君が此処に!?」
「寒いから暖を取りに」
「なんでそうなる!?」
「それ口癖なのね♪」
「…ハァ…通りで君の夢を観るワケだ」
「私の夢を観てくれたの?」
「あぁ。悪夢に近かったが…」
「私もラスティの夢観たの。何故だが貴方に首輪を付けて散歩する夢」
「呪いか!?」
「私達良い関係になれそうね♪」
「近寄るな!俺にそんな趣味はない!!」
「踏まれる方が好きかしら?」
「なんの話しだ!?」
奇遇にも同じ夢を観たヘカーティアに悪寒という名の戦慄を覚えたラスティは近付けてくる足を払って立ち上がる。本来夢は直ぐに忘れてしまうものだが今回の一連の出来事は暫くは忘れられそうにないだろう…
一泊を終えて遊楽亭を後にした2人は再び妖怪の山を歩いて紫苑の捜索に戻る。まだ朝の出来事が頭から離れないのか苦い顔をしているラスティとは裏腹にヘカーティアは妖艶の笑みを向けている。
「…そんなに俺をからかって楽しいか?」
「楽しいわ」
「俺は玩具じゃないんだぞ…」
「地獄には…こんな面白いリアクションをしてくれる人なんて居なかったしね」
「えっ?」
「純狐もクラウンピースも…イタズラしたって貴方程のリアクションもしてくれないし」
「!」
「純狐は二言目には嫦娥嫦娥って…クラウンピースに関しては私のイタズラを間に受けちゃうし……だから…ラスティがあの時私に思想の違いを真っ向から否定してくれたのも…実は嬉しかったのよ。私にあんなハッキリと物申す人なんて…地獄には居なかったから」
「ヘカーティア…」
「貴方のリアクションは全てが斬新で…私の心の中で何かが満たされていくのを感じるの。それがいったいなんなのか私には分からない……けど不快ではない何かであるから私はもっとそれを知りたい。だからついつい貴方にイタズラしちゃうの。今日の朝のリアクションも…嬉しかったわ」
「…イタズラに関しては素直に喜べないが…君にも悩み事とかあったんだな」
「勿論。地獄の女神だって女の子よ?悩みの1つや2つくらいあるわよ普通」
「そうか…俺もそれを聞いて安心したよ」