邪馬台幻心夢(後)
□巡り逢う邪馬台
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一応話しを聞く為に彼女が座っていた椅子に2人も腰掛けると読書をしていた金髪の少女が落としていた視線を本から2人に向ける。
「…この人達は?」
「ほら!前にも言ったでしょイヴちゃん!いつか私達の前に現れる運命〈さだめ〉に抗う男の子……それがこの子だよ!」
「なら素敵な出逢いとやらは出来なかったみたいね」
「うっ…確かに…」
「なんなんだお前ら…」
「私は壱与って名乗ったでしょ?この子はイヴちゃんだよ!凄く頭良いんだよ?」
「私は古明地 こいしだよ」
「…貴方人間じゃないのね」
「うん。私は妖怪だから!」
「へぇ!見た目じゃ全然分からないよ!」
「えへへ!」
「おい…話しを戻せ」
「そうだったね。えっとつまり私は…過去の世界からこの時代にタイムスリップしてきた人間って言うのが一番しっくりくるかな?」
「「!」」
「信じられないよね?」
「当たり前だ。どうやってそんなことが…」
「…私達の時代に存在した【神威力】の影響を受けてしまったからだよ」
「何?」
「私達の邪馬台国の時代は戦争一色だった。戦っては人が死ぬだけの意味のない世界……そんな戦乱の世を終わらせる為に私は仲間を集って倭国を統一することを願い【神威力】の眠る高天の都を目指して旅を続けていたの」
「…どの時代も戦争かよ」
「そこに辿り着くまでに何千何万の人が死んだわ……だけど私は漸く見つけたの。高天の都に在る封じられた神都を」
「そこに有ったの?その【神威力】ってやつ」
「いや待て…そもそも【神威力】は『物』なのか?」
「【神威力】は願いを実現させると言われている力…それは思念とも呼べる総意の化身。辿り着いた者の意志を感じ取って体現する器…」
「物なのか物じゃないのかハッキリ言えよ」
「答はないよ。だって封じられた神都に最初に入った私の総意が器に注がれて…その願いは国を変えたんだもん。実際に【神威力】は見ていないの」
「だがその話しが本当なら国は変わったんだよな?」
「…変わる手前空間は激しく歪んだわ。きっとその時の歪みに巻き込まれた私は時間の本流に流されて…大きく時を乗り越えてしまったんだと思う」
「そして壱与はこの時代に来ちゃったんだね」
「おそらくね…」
「それで結局…邪馬台国は変わったのか?」
「…この時代に邪馬台国はもう存在しない。きっと…それが答だよ紫苑君」
「………」