邪馬台幻心夢(後)
□巡り逢う邪馬台
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「例え倭国統一が成された世界に変わっても…人の…欲望の本質までは変わらなかった。その後の邪馬台国を私は知らないけど…きっとそれを滅ぼしたのも私達人間なんだし…」
「誤魔化せないって…そういうことか?」
「うん…少なくとも私の眼にはそう映ったかな」
「いくらでも人は戦争を起こす……変わらないな人間は今も昔も…」
「紫苑…」
「でも私は…この時代に来て人間のことをまた深く…学べたからそれで良いの。だからこそ過去に戻って…少しずつ変えていきたい。その為にも私は過去の世界に帰らないといけないの」
「だがどうやっ…いやまさか…」
「そうだよ。私はこの時代の【神威力】を使って元の世界に帰る。その為にわざわざ陰陽連に手を貸してあげてるんだから」
「!」
「私…予知能力あるんだ。人の直接的な死の予兆以外の出来事を過ぎらせることが出来るの」
「…本当にサイキッカー野郎だったな」
「私一応人間だよ?」
「信じられねぇな……だが大体分かった。お前が此処に居る理由も…」
「だけど私…知らなかったの」
「え?」
「この時代の【神威力】の為に外では戦争が起きていること……そんな人達の為に今迄力を貸してた自分が…許せなくて…」
「壱与も騙されてたんだね…」
「世界統制って言葉が嘗ての倭国統一と響きが似てて…つい賛同しちゃった自分が憎いよ…」
「…だがもし本当に世界統制が【神威力】によって現実のものになるのだとしたら…世界から本当に争いが無くなるのだとしたら……それは一番幸福なことなのかもしれないな」
「し、紫苑…何言ってるの?それを認めたら今迄戦ってきた意味が全て無くなっちゃうんだよ!?」
「………」
「気をしっかり持ってよ紫苑!」
「…戦いのない世界以上に幸福なものはない……言葉では簡単に言えるが難しいな…」
「紫苑…」
何処か少し前とは違う思い悩む紫苑の姿にこいしは不安そうな顔を向ける。だが自身は紫苑に救われて今の自分が居る……だからもし紫苑が何かを決めたら自分が今度はこの人の支えになりたい。例えどんな結果になろうとも……こいしの強い彼に対する想いの意志は揺らがなかった。
「ねぇ紫苑君…折角貴方とも此処で巡り逢えたんだし…1つ無茶なこと言って良い?」
「…なんだ急に改まって」
「私達を…此処から連れ出して」
「!」
「陰陽連のやろうとしてることが例え心地良く聞こえても…私はもう信じられない。どんな理由があっても戦争を起こすような人達とはもう…一緒に居たくないから…助けて紫苑君!」