邪馬台幻心夢(後)
□紫苑
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その頃幻想郷では遂にラスティが紫苑への手掛かりを掴む。崖の戦闘跡が残るこの地にてバラバラに砕けた刃らしき残骸を手に取ったラスティはそれをジッと見つめていた。
「どうしたの?只の刃物の残骸でしょ?見た感じ此処で戦闘があったみたいだけど…」
「この刃から微かにだが…紫苑の氣を感じる」
「えっ?」
「これなら…イケるかもしれない」
そう言ったラスティは胸元に付いたブローチを外すと封が解けたことでその姿を吸血鬼へと変貌させていく。それを見てヘカーティアは驚いてしまう。
「あ、貴方…吸血鬼だったの!?」
「半妖だけどな…」
「なんで封なんて…」
「この話しは長くなる。ひと息着けた時にでも話す」
「わ、分かった。でもどうしてその姿に…?」
「この姿でのみ発現出来る能力を使う為にな」
「その姿でしか発現出来ない能力?」
「通常時の俺の能力は『情報処理を行う程度の能力』と言って思考知識認識等の能力を向上させる効果が見込める。だがこの姿に戻った俺の能力は一段階進化して全く新しいものへと生まれ変わる」
「どんな能力になるの?」
「『情報を感知する程度の能力』……即ち触れた物のオーラを頭の中に映像化して再生することが出来る」
「そんなことが出来るの?」
「物にも時間が存在し、そこで流れた時を垣間見れるこの能力は情報を引き出すのに打って付けだ。もしこれが紫苑の物ならば彼が此処で何をしていたか分かるかもしれない」
「じゃあ早速やってみせてよ!」
「あぁ」
期待を込めてラスティは意識を集中させる。すると少しずつ頭の中へ流れ込んでくる記憶は紫苑と翳戔の戦いを映した。そして彼に敗退した紫苑は異空間へと姿を消したのだ…
「…成る程な。これではいくら紫苑を探しても見つからないワケだ」
「どういうこと?」
「紫苑は陰陽連に捕まってしまった」
「そんな…あの子だって凄く強いのよ?」
「紫苑は動揺しているようにも見えた。もしかしたら何か弱みを握られているのかもしれないな」
「セコい連中ね」
「だが少し前進したな。あとは異空間に消えた紫苑の居る陰陽連の根城を見つけることが出来れば…」
「その異空間が何処に開いたか分かる?」
「あ、あぁ。確か…この辺だが」
記憶の映像と同じ場所を見つけてそこを指差すラスティだが彼女の意図が分からない。すると何もない空間に手を向けてヘカーティアは何かを感じ取った。
「…ヘカーティア?」
「フフッ…」