邪馬台幻心夢〜An additional story〜

□STRAY CAT
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それから数時間後のことだった。ゴーストタウンを離れて荒れた荒野を暫く歩いた先に見える廃虚の前でスヴェンはハンドガンを片手に笑みを浮かべる。

「根気良く町の連中に聞き込みを続けた甲斐があったぜ。やっと見つけた……町外れの廃工場……パロデム一味のアジト…!」

ハンドガンの引き金を引いて気合いを入れるスヴェンの表情は固い。相手はA級クラスの犯罪者な上に集団なのだ。自分より格上かもしれないターゲットを前に無事生きて帰れるかは知らないが、目の前に潜伏している犯罪者を見過ごすワケにはいかないと己を奮い立たせたスヴェンは慎重に廃工場の中へと足を運んだ。

「…妙だな……ヤケに静かだ…」

破棄された工場ということもあり中は真っ暗であり、穴の空いた屋根からは僅かな光しか差し掛からない。だが中は意外にも静かで誰も気配を感じないことにスヴェンは不信感を抱いた。

「……(俺の見立てでは少なくとも20人近い数が此処に潜んでいる筈なんだが…)」

柱に隠れて薄暗い空間を見渡すスヴェン。だが索敵に意識を向け過ぎてしまい背後から迫る男の気配に気付くのが少し遅れてしまう。

「ネズミでも良い女なら歓迎したんだがなぁ…!」

「!?」

背後からの男の声にスヴェンは直ぐさま距離を取る。自分の視界に映ったのは手配書の写真と全く同じ男……自分の追い続けたターゲットだった。

「男じゃ…楽しめねぇなぁ…!」

「パロデム!!(いつの間に…!)」

パロデムが現れると物陰からゾロゾロと出てくる他の犯罪者達。瞬く間に囲まれスヴェンは退路を断たれてしまう。

「残念だったな兄ちゃん。ここ数日俺達のことを嗅ぎ回ってる掃除屋が居るってことはゴーストタウンの住人から筒抜けなんだよ」

「な、何!?」

「みんな波風立てたくねぇらしいぜ?媚びても生きてぇとさ…!」

「っ…(なんてこった…!)」

こんな事態も想定の範囲内だったのかスヴェンは懐から取り出した装置を起動させる。すると装置から煙が噴き出し辺りの視界を白に染め上げていく。

「なんだぁ!?」

「前が見えねぇ!?」

「姑息な手を…!」

「(ひとまず退くしかねぇ!糞…大勢と戦う為に作った煙幕がこんな形で役に立つとは…)」

煙に紛れてこの場は退こうと出口に向かって駆けていくスヴェン。だが他の二流は騙せてもパロデム相手にその手の小細工は通じなかった。スヴェンの気配を察して先回りしていた彼の正拳突きを顔に受けてスヴェンはその場に転がり込んでしまう。

「ぐはっ!」
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