野良猫幻想夢(上)

□能力への鍵
8ページ/9ページ

翌日トレインは地下室に向かう前に
美鈴に会っていた。いつもの中国服に
着替えもうピンピンしている様子だった。

「もう体はいいのか?」

「ハイ!昨日ゆっくり休んだお陰で体調もすっかり良くなりました!」

「そりゃよかった!んで昨日の話しの続きだが……お前の能力って」

「ハイ。私は『気を使う程度の能力』を持っています」

「気!!?」

トレインは驚きを隠せなかった。
何故なら自分のこの『能力』が『気』と
同じ類いだとするとあの電気の発生は
どう説明を付けるのか……

「ちょっと待てよ!気だと!?」

「ハイ」

「気で電気が起こせるとは俺は到底思えないんだが……」

「ですから私の能力とは『逆』の類いではないかと!」

「逆!?」

『気』に逆ってあるのか?と聞こうとした
トレインだったが質問する前に美鈴が
実際に言葉の意味を見せてくれるみたいだ

「まぁ私を見ててください」

そう言いながら美鈴はその場に構える。
この構えは『太極拳』と言われ
中国に伝わる拳法の1つである。
ゆるやかに弧を描く動作を主とし
外の世界では健康維持の体操としても
普及されているこの拳を美鈴は得意とし
『柔は剛を制する』と言う。

「………ハァァァァァ!」

美鈴が何やら構えながら神経を集中
させている……その瞬間彼女の周りに
何かが出ているとトレインは感じた。

「!!!」

目には見えない何かが美鈴の体を
巡っている……それも獣を追い返す事も
出来そうなぐらいに感じる威圧感。

「感じますか?」

「あぁ……生暖かいような迫を感じるぜ」

「これはオーラです」

「オーラ……『撥』みたいなものか」

「そもそも『気』とは生命力や活力の根源となる『心』です!オーラは『撥』……体の中に巡る力を外に放出し体に纏う事が私には出来ます!」

「つまり?」

「纏う事で攻撃力、防御力、脚力を上昇させる事が出来るんです」

「それの逆って……」

「体中に巡るオーラを体内で一カ所に圧縮しその力を一気に体内全体に行き届かせ中で拡散させる『撥』とは逆の『練』」

「練?」

知らない言葉を次々に言われ混乱する
トレインだったがこればっかりは
覚えるしかないので少し頭の中を
整理して分かった事を美鈴に言って
確認する事にした彼は口を開いた。

「つまり簡単に言うとだオーラを外に出すのが『撥』で中で拡散させるのが『練』なんだろ?」

「ハイ」

「俺はその後者のオーラを中に溜め込むタイプだとしてもどうやって電気が出るんだよ?」

「拡散は2つ以上の物を混ぜると言う意味です」

「オーラの他にまだ何かあるのか?」

「……『氣』です」

「『気』は最初に言ってたじゃん」

「『氣』です!漢字が違うんです」

美鈴は紙に書き違いを伝えるとその
違いにもよく分からない様子のトレイン。

「俺のは……氣?」

「おそらくトレインさんのその電気は体内で練と氣が拡散することで起きているんだと思います!」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ