博麗幻天夢
□The reality of the vision
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霊夢のどこからくるのか分からない自信が不思議と零射の中にも溶け込むかのように伝わってくる……そして先程自分が2人に言っていた言葉が如何に小さな悩みだったのかが痛い程……思い知らされてしまった。
「…ごめん」
とりあえず謝りたかった。今はそれだけを一心に零射は霊夢に頭を下げて謝る……すると霊夢はさっきまでの表情がまるで嘘みたいに一転して柔らかく……何より力強さを感じる笑顔で零射に歩み寄る。
「分かれば良いのよ」
そう言うと霊夢は何の迷いもなく零射を優しく抱きしめた。同時に霊夢の体温が密着する体を通して零射に伝わっていく。
「!!!」
「!」
勿論この行為に零射だけじゃなく魔理沙も目を丸くしびっくりして息を呑んでいた。
「今まで辛かったわね……ずっと独りだったんでしょ?」
霊夢はまるで今までの零射の生活を知っているかのような様子で零射に優しく言葉を掛ける。体温や言葉の暖かさが……零射にとっては全てがとても懐かしい思い出…
「大丈夫よ……今日から独りじゃないわよ…独りじゃ…」
霊夢の左手が零射の頭を優しく撫でる……まるで母親のようなそんな懐かしくて…優しい何かが零射の中で忘れていた感情を瞳から零れる滴によって再び呼び覚ました。
「!」
「あっ」
零射の目から零れたものは……大分久しく忘れていた感情…それは涙だった。自分ですら涙を流すとは思いもしていなかったがその光景に思わず魔理沙も開いていた口が閉じないで尚も息を呑んでいる状態だった。
「良いのよ泣いたって……今まで辛かった分今は全て吐き出すまで泣いても……だから泣いた分だけ強くなりなさい…零射…」
「……っ!」
それから零射は火が付いたように長い間声に出して泣いていた。今までの辛かった全てを吐き出すように……霊夢の体に縋り泣き崩れる。そんな零射の頭を尚も優しく撫で続けながら微笑んでいる霊夢もまた自分へ心を開き身を委ねてくれたことに少なからず嬉しかったのかもしれない…
あれから何十分経ったかは分からない……全てを吐き出した零射の今の気分はとてもスッキリしたような感じだった。言葉で表すのならずっと背中にのし掛かっていた重りが外れたかのように……何より霊夢が言ってくれた今日から独りじゃない…が凄く……凄く響いて嬉しかった。
「ありがとう……霊夢」