博麗幻天夢
□A new life
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少しグレイズながらも零射は確実に霊夢へ近付いていた。あと少しと迫ったところで霊夢も少し本気になったのかさっきとは比べものにならない程のお札を両手に持ち、それを放つ体勢に入りながら言った。
「面白いわね!」
霊夢は更にお札の数を増やし攻撃範囲も放つスピードも先程とは全く比べものにならないぐらいに上がったのが見て取れる。
「!?(えぇ!?)」
明らかに断然違う異質を感じるお札の壁に零射はかわす術もなく何発か体に被弾し弾かれその場に倒れ込むのだった…
「……(全然手加減してくれてたんだね…霊夢さん…)」
「零射!?」
やり過ぎたと感じた霊夢は心配した顔で零射に駆け寄って意識があるかどうかを確認しようと零射の頬を軽く叩いた。
「痛っつつ……ってあれ?木を貫通させる程の威力のお札を何発かくらったのに殆ど無傷だよ…」
被弾した箇所を実際に触れてみるとそこは殆ど無傷でありそれを知った零射は勿論驚いていると霊夢は当たり前のように言う。
「威力は勿論下げてるわよ!あんなの零射に向けて放つワケないじゃない!」
これが鍛練だからとは分かっていたが今の霊夢の言葉が何だか少し嬉しく感じたのは何故か?と自分自身に問う零射だったがその答えは今の零射からは出なかった。
「よし……もう1回だ」
そう言いながら零射は服に付いた汚れを手で叩きながら再び起き上がる。初めての被弾に対し恐怖すら感じていない様子の零射に霊夢は苦笑を浮かべながら返した。
「根性はあるわね!じゃあ再開よ!」
そして再び零射は無数のお札をかわしつつ霊夢へと近付く。そして被弾してダウン、再チャレンジ、やっぱり被弾してダウン。
昼食を挟みその繰り返しが暫く続く……だがそれは確実に零射を成長させていた。
気付くと空は夕焼けに包まれていた。もう何時間鍛練に勤しんでいたかは知らないが零射は荒く息を吐きながら汗を体中から垂らしてその場に膝を付いていた。
「今日はここまでね」
零射の限界を察した霊夢は手に持つお札を仕舞いその日の鍛練の終わりを告げた。
「うん……ごめんね…今日1日無駄にしちゃって…」
頑張ってはみたが結局能力の開花どころかきっかけすらも掴むことが出来なかった零射は申し訳ない様子で霊夢に謝る。
「1日で開花出来るなんて思ってないわよ……積み重ねが大事よ」
「…そうだね」