博麗幻天夢

□A new life
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「どうするの?」

そう聞いてくる霊夢に対し勿論零射の返す言葉は決まっていた。頭を深々と下げて会釈しながら感謝の意を込めて言った。

「…お世話になります」

そんな零射の返答を待っていたかのように霊夢は笑顔で「しょうがないわね」と返答してくれた……もしこの場面で断られていた場合はバッドエンド完結だったが…

そんなワケで正式に霊夢の所でお世話になることになり、同時に居候となった零射はまず霊夢へ言う言葉は決まっていた。

「何かすることはないかな?」

「別にないわよ」

とても短い返答で霊夢はあっさりと会話を終わらせてしまった……非常に早過ぎる。

「…そっか」

会話が止まり零射は気まずくなり辺りを無意味に見渡してみた。見えるのは襖に丸いテーブルに畳、あとは時計ぐらいだ。

「………」

日頃家では自分1人だからこの沈黙にも全然耐えられる零射だが今日は違った。何故なら今日は隣に女の子が居るからだ。見た目からして歳もそう離れてはいない筈……そこが尚更気まずいに繋がってしまい気付くと零射は霊夢の顔をずっと見ていた。

「…何よ?」

「あ、いや…別に…」

「?」






それから暫くして漸く霊夢が畳に手を置き動き始めた。次にテーブルに手を置いて立ち上がった霊夢は空の湯飲みを片手に台所へと向かっていく。透かさず零射は気まずさ解消を含めて霊夢に話し掛けた。

「霊夢?」

「夕食の支度をするのよ」

そう言いながら隣の部屋に移動した霊夢は何やら包丁やら食材やらを取り出し料理を始める。手慣れた手付きで無駄なく次々と調理をスムーズに進めていく霊夢の様子を零射はいつの間にか覗くように見ていた。

「………」






特に進展がないのでまた少し時間も経ったことにしよう。丸いテーブルに並べられた料理の香ばしさからは霊夢の料理の腕前がすぐに分かった。印象を裏切らない巫女だ。

「「いただきます」」

両手を合わせて零射は箸を右手で持って料理を口に運ぶ。そして言葉は勿論…

「美味しい!」

「口に合ってくれたなら良かったわ」

零射の様子を見て少し安心したのか霊夢も左手で箸を持って自分の料理を口に運ぶ。

「霊夢って左利きなの?」

「両利きかな。よく使うのは左だけどね。だから箸はこっちでね。元は左利きだし」
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