野良猫幻想夢(上)

□黒と紅【責任】
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「!」

「目ぇ覚めたんだ!良かったぁ♪」

扉を開いて部屋に入ってきたのはタオルで
髪を拭きながら微笑むフランだった。

「お前自分の部屋に戻ったんじゃ…」

「お風呂に入ってたんだよ!」

服装も白いワンピースに替わっているので
フランの言っていることは本当だろう……
だが重要なのはそこではない。トレインは
今一番フランに聞きたかったことを問いた

「でもなんでまた俺のとこに?」

「一緒に居たいから♪」

「!」

笑顔を向けて返答するフランのその一言が
胸に刺さったように痛くなった……誰にも
必要とされず只飼い猫として今まで組織に
使われていた時の日常ではなかった感情と
セリフ……そんな新しい感情にトレインは
戸惑いながらフランに返答した。

「お前は俺を…必要としてくれるのか?」

「?…当たり前じゃん♪」

再びトレインに笑顔を向けてくれるフラン
……その言葉が嬉しかった。その気持ちが
一筋の滴となってゆっくりと零れ落ちる…

「!?」

自分の意思に反する涙はトレイン自身が
一番驚いていた……すぐさま左手で涙を
振り払うトレインにフランは言った。

「トレイン!?なんで泣いてるの!?」

「!…い、いや泣いてねぇよ!これは只…目に塵が…」

自分でも分からない涙の理由……こんなに
堂々と涙を流したのは11年振りだった。

「もしかして寂しかったの?」

「!!」

その言葉に再び胸が痛くなる……理由も
分からずに只胸だけが痛くなる。すると
フランはトレインに歩み寄ってベッドの
前で白いスリッパを脱いで露わになった
素足をベッドの上に乗せる。トレインの
前に座ったフランは左手を掴んで言った。

「ごめんね1人にさせて」

「!!」

「もう行かないから…」

「フラ…ン…」

そう言うとフランはその小さな体で優しく
トレインを包み込む……白いワンピースに
体が密着する感覚。それは温かい温もり…
フランの匂いがトレインを安心させた。

「………」

すると胸の痛みが消えていく……そして
トレインはフランの『心』と触れ合った。
互いに支え合える存在になりたい。この
温もりにまた助けられたい。トレインは
そう思いながら今はフランに体を預けた。



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