野良猫幻想夢(上)

□動き出す者達
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「!」

トレインは急に背中に感じた重みに気付き
後ろを振り向くとガシッと両手をクロスし
抱き付いてきたフランはぴょこっと顔だけ
出して咲夜を睨みながら言った。

「咲夜……トレインと何話してたのさ?」

「ト、トレインが何か手伝いたいと申し上げていましたのでそれについて話していたのですよ!」

「お前なんで咲夜に殺気向けてんだよ…」

後ろから刺さる威圧感をモロに受けている
トレインは頬から汗を垂らしながら言うと
フランは誤魔化すように話題を変えた。

「何をするのトレイン?」

「本泥棒から本を奪い返しに行くんだよ!フランも行くか?」

「あぅ…私は…」

すると急に黙り込むフラン。すぐに行くと
いう返答が返ってくるものだと思っていた
トレインはフランの様子を気に掛ける。

「?…フラン?」

「フラン様は駄目なんです…」

「何がだよ?」

「お嬢様とフラン様は太陽の光を浴びると『気化』してしまうんです」

「!!」

今の今まで忘れていたトレインだった……
レミリアもフランも吸血鬼であり日差しに
弱いということを。言葉を失うトレインの
背中でギュッと抱きしめる手に力が入った
フランは切なそうに下を向いて言った。

「なんでこんな体質なんだろ…」

「…フラン」

悲しそうな顔をするフランの顔をジッと
見つめてトレインは優しくフランの頭を
撫でながら傷付けないように返答を返す。

「じゃあ少しの間待ってろよ!俺もすぐに帰ってくるからさ」

「…うん!」

「………」

「じゃあ出口を教えてくれ2人共」

「ハイ」

「こっちだよ!」

トレインはフランと咲夜に案内を求めると
2人はそれに快く応じて紅い廊下を歩く。
そしてトレインが紅魔館で最初に足を踏み
入れたエントランスの前にまでやってきて
出入り口の前に立った2人は言った。

「行ってらっしゃいませ」

「早く帰ってきてねぇ!」

「おぅ!」

会釈をする咲夜と手を振るフラン。2人に
背中を見せながらトレインは左手を上げて
一言返答を返すと紅魔館を出ていく。

「咲夜…トレインと寝たら許さないから」

「ね、寝ませんよ!」

遠くなる彼の姿を見つめながらフランは
そう言うと咲夜は言葉を詰まらせながら
返答した。そして門の前は鼻提灯を作り
立ち寝をしている美鈴を発見する。

「…凄ぇ。いつも寝てんだな」

そしてそのままトレインは紅魔館を後にし
魔理沙の居る博麗神社へと向かった。



魔法と人形

黒と紅【運命】
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